手洗いがやめられない、玄関のカギを何度も確認してしまうということで悩んでいます。
なぜ私は普通にできないんだろうと落ち込んでしまいます。
何度も確認を強要するので家族にも迷惑をかけてしまいます。
病院で薬をもらって飲んでいますが、一向に良くなりません。
どうしたら良いでしょうか?
このようなお悩みの解決のヒントになれば嬉しいです。
そのあなたのお困りの症状は誰のせいでもありません。原因は、あなたの脳の誤作動なのです。このような手洗いや確認などは、あなたの周辺に居る人からの理解が、なかなか得られないことが多いです。
「なんで、そんなこともできないの」「そんなに確認することないでしょ」「さっきも確認したでしょ、何回も言わせないで!」
家族からも、強く言われることもあるかもしれません。本当にお辛いですね。よく今まで頑張ってこられましたね。どうぞ一人で悩まずに当院に、ご相談ください。
きっとあなたにも解決するヒントがあります。一緒に探していきましょう。
強迫性障害による日常生活のお困りの症状が少し緩和される
強迫性障害の大まかな内容については、こちらを参考に御覧ください。
強迫性障害とは
強迫的な行為というのは、「そんなことをしなくても良い」という事をご本人は理解しています。ですが不安になり、やらないと気持ち悪いので行ってしまいます。
これは不安や恐れなどがあって、その不安を減らすための代償の行為として、やってしまっていることが多いです。だからその不安や恐怖と立ち向かう勇気が必要なのです。
強迫性障害の症状とは?
- 家の玄関の鍵を何度も何度も確認して、なかなか外出できない
- ガスの元栓を何度も何度も確認してしまう
- 外から帰宅したら手洗いを何度も何度も何時間もしてしまう
- 自転車で走っていて鳥の糞がかかっていないのにかかったように気がする
- 絶対に車を運転していて人を轢いたことはないのに轢いたかもしれないと思ってしまう
- 冷蔵庫の中が左右対称でないと気持ち悪い
- 特定の数字の「ナンバー」だけが気持ち悪い、不吉に感じる
これらを家族にも強要するようになってしまいます。また自分では不安になるので、何度も確認してもらうようになります。
洗浄強迫
手を洗う
↓
泡が気になる
↓
蛇口が気になる
↓
ゴミ袋が当たってないのに、自分に触れた感じがする
↓
手袋をするが汚く感じる(手袋も汚く感じて洗ってしまう)
↓
洗ったのに、まだ汚く感じる
↓
洗ったのに記憶がない(洗ってないかもと、不安になる)
などと、いろいろと想いがめぐり、不安の堂々巡りとなってしまう方もいらっしゃいます。だから、とてもお辛くなるのです。
確認恐怖(何度もカギを確認してしまう)
家事などの災害が起きないように、泥棒が入らないように、過剰な点検を繰り返します。
確認→不安→確認
自分が安心するために外出するときに第三者に確認してもらい、責任を押し付ける場合もあります。家族の場合が多いですが、これを「巻き込み型」といいます。
儀式行動・繰り返し強迫
一度、不安や恐怖の感情が頭に浮かぶと、そうならないようにする為に、「ある行為」を繰り返さないといけないと感じます。この「ある行為」というのは意味のない行為のことも多いです。
例えばパートナーや兄弟などの家族がいて、その方が死んで「自分が一人になってしまったらどうしよう」という恐怖を感じたとします。
そんな時に服を脱いだり着たりしてしまったり、手を洗ったり、机の引き出しの掃除をしたり、強いこだわりを持って、不安が消えて落ち着くまで、その行為を繰り返してしまいます。
整理整頓強迫・左右対称・不吉な数字
左右対称に並んでいないと気がすまない人です。イングランドで有名なサッカー選手のデビット・ベッカム選手もこれにあたります。彼は冷蔵庫の中が左右対象に並んでいないと気がすまないとお話していました。物事が完璧でないと不快に思い儀式行動に囚われて日常生活にも支障が出てしまいます。
当院では数字に執着される方がいます。「4」や「9」も一般的に不吉な番号と感じる方もいらっしゃいますが、それが、ものすごく酷くなった場合は、日常生活にも支障が出ます。
収集強迫・ゴミが捨てられない
つまらないものを集めては捨てられない人です。いつかは必要になるだろうと捨てられないのです。家がごみ屋敷みたいになる可能性もあります。
想像型儀式行動強迫(ルーティン)
苦痛を和らげるために想像型の儀式行動を取ります。繰り返すのは行動ではなくて、頭の中での考えです。祈り、特定の言葉や文句を繰り返します。また数字を数えたりすることもあります。
スポーツ選手のルーティン、日本では元担ぎ(げんかつぎ)というのも過剰になりすぎると儀式行動となることがあります。それを他人に押し付けたりすると、日常生活に支障が出る場合もあります。
極端な心配症や軽い強迫観念
「どうせ自分なんて」「自分には全く良いことはない」と極端なネガティブな考えを繰り返します。そして日常的な心配などに執着し手放せなくなります。
健康のこと、お金の不安、過去のトラウマや傷つけられたことなどをいつまでも考えてしまって、今から行う違うことでも、失敗するのではないかと不安になってしまいます。酷くなると外出できなくなってしまいます。
上記のような行動を1日2時間以上されている場合は専門家の助けが必要な場合が多いです。一度、心療内科などの病院を受診されてください。
参考:「強迫性障害を自宅で治そう」より
自分だけで苦しまずに専門家に相談してください。
強迫性障害の原因とは何か
これらの行為は自分を守ろうとするものなのです。
その原因となっているのは、何かの不安や恐怖です。それを減らすための代償行為です。脳が過剰に反応している状態で脳の誤作動ということもいえます。
強迫行為にいたる強迫観念(強く思い込んでしまう)があります。
この繰り返しなのです。
「不安」など考えすぎることがあって、それを何らかの体の行動などで補って、その苦痛を取り除こうとするものなのです。つまりストレスや感情の抑圧の代償行為だともいえるのです。
また脳の誤作動という見解もあります。
このような方は神経質であったり、真面目すぎたり、完璧主義の方が多いです。
そして個性(パーソナリティ)にも特徴的なことがあります。このような心理テストをやってみてください。
強迫性障害チェック
こちらのサイトからチェックできます。どうぞやってみてください。
強迫性パーソナリティ障害のチェックテスト
あなたの育っていく背景の中に、強迫性障害の克服のヒントがあるかもしれません。4つ以上当てはまりまると、そのパーソナリティの傾向があります。
- 細かいところにこだわりすぎてしまう
- 完璧にやろうとして、時間が足りなくなってしまうことがある
- 仕事や勉強に打ち込むあまり、娯楽や人付き合いは二の次になりがち
- 不正やいい加減なことに対しては許せない方だ
- 役にたたないとわかっていても、捨てるのは苦手である
- 自分の言う通りにしない人とは、うまくやっていけない
- お金は、なるべく節約して、将来のために貯金している
- 頑固だと良く言われる
4つ以上、当てはまった方はこちらを御覧ください。
そして、「克服」のところを参考にしてみてください。また、ご家族に強迫性障害の方がいらっしゃる場合は「接し方」をご覧ください
強迫性障害の影響を理解する
当院のクライアントさんでは最長2時間、手洗いをされていた方がいらっしゃいます。手の皮もめくれて、洗いすぎてふやけてしまい、冷えてしまって動けなくなってしまわれたこともあります。強いこだわりや代償行為でされていますが、日常生活にかなり支障が出てしまうことが多いです。
家族や職場への強迫性障害の影響
家族にも影響があります。確認については家族への確認も頻繁に行うようになるケースが多いです。自分のルールや儀式的行動を強要することも多いので、それに付き合う家族も大変です。
触れられるのは絶対に嫌で、一緒にいて、近くにいるだけでも触れたんじゃないかと不安になり、手を洗いたくなることがあります。
本人には「聖域」というのがあって、そこには誰にも入られたくないのです。たとえ家族でもです。
特に寝るところの布団だけは母親であっても入ったり、触ったりするのはご法度なのです。
スマホを一日触っているのですが、スマホも触る時は必ずシャワーを浴びないと気がすみませんので「聖域」に近い存在です。「聖域」とは他人に支配されない自分だけの安心できる場所のようなものなのです。
ご家族の対応も、とても大変です。一緒になって同じように手を洗ったり、儀式を求めるようになります。
ご本人が一番、大変なのですが、家族は「なんでこんなこともできないの!」と強く言ってしまったり、「なんでこんなことで手を洗わないといけないの!」と言ってしまったりしてしまいます。
本人もわかっているのです。でも気持ち悪くて洗わずには、いられないのです。
なかなか家族の対応も難しいです。強迫行為を無理にやめると、頭では「まだ汚れているに違いない」と考えてしまっているからなのです。
聖域が生まれるのは、汚れが広がっていって、伝染してしまうのではないか、汚れてしまうのではないかと「脳」が勝手に想いこんでしまうからです。一種の予期不安です。
汚れているかわからないので、少しでも不安要素があると汚いとみなしてしまうのです。
100%綺麗でないと気が済まないのです。
ここでは「認知の歪み」がある人が多いです。
認知の歪みの中の「○○ねばならない」「全か無かの法則」「完璧主義」と強い思い込みがある人が多いです。
このような思考にがんじがらめになって、自分のことも許すことができなくなってしまうのです。
また、同居の家族にも同じように「儀式」を強要してしまいます。これを「巻き込み」といいます。
自分で納得するのがいいので、「この歌を歌いながら、順番通りやったら、できていることにする」というのがオススメです。
強迫性障害が日常生活に及ぼす影響
一番影響のあることは外出できなくなることです。
汚れると嫌なので外出できなくなってしまいます。外出しても「手を洗えなかったらどうしよう」という考えになり、外出できなくなってしまうのです。
辛かった体験
私は、他の人に汚れが広がったらどうしようという不安がありました。
また自分も汚れてしまっているんじゃないかと思っていました。
何度も手を洗っていました。
ひどい時は2時間くらい・・・
手がふやけてしまいます。
痛いです。
手を洗っている時、歌を歌うのですが、途中で雑音が鳴ったりすると、また初めからになるのです。
本当にお辛いですね。
大変ですが、1回だけというルールを作って、完全に依存するのではなく、誰かに見てもらうのも一つですね。
ご家族もルールを決めて、いつまでも見守るのではなく、「今日は1回だけ見るね」とあらかじめルールを決めるのも、時には必要です。
新型コロナウイルスに関しては、強迫性障害の方は、「疫病恐怖・洗浄強迫」ということが悪化することがございます。
自分が感染しているのではないか、異常に他人の唾液などを恐れたり、すでに感染していると思い込み、トイレなどの共有を介して家族にうつしてしまうのではないかと、しつこく掃除したりします。
その事に異常にエネルギーを使うので、とっても、とっても疲れてしまいます。
眼に見えないような小さなシミなどでも、何か悪いウイルスや虫、唾液、血液、鳥の糞などではないかと思い込んでしまうこともあります。
強迫観念による精神的な影響とは?
予期不安が強くなります。明日も手を洗えなかったらどうしようという不安に悩まされ、眠ることができなくなる方も多いです。
強迫性障害と向き合うための効果的な方法
強迫観念を失くそうと思わない事です。うまく付き合おうくらいに考える方が上手くいくことが多いです。
ストレスを減らすことが強迫性障害克服に繋がる
4つのストレスを減らし、ストレス耐性(情緒的サポート、対処能力、体力、自己肯定感)を上げることが重要です。
儀式やこだわりを取り除く効果的な方法
パターンの中断という方法がオススメです。いつもと違う道を歩いてみる、お風呂から入ってご飯を食べる習慣があれば、反対にしてみる、部屋のレイアウトを変えてみる、などいつものルーティンを少し変えてみると脳の違う部分が活性してくれるので気がラクになる方が多いです。
必要な努力と強迫性障害との向き合い方
受け流すことも大切です。執着しがちになり、不安になり、強迫行為を繰り返してしまいますので、気にしないことができれば解決の一歩となっていきます。
解決のコツ
- 自己コントロールができるようになれば強迫行為を止められる(強迫観念を無視する)
- わかってもらえる人が近くにいる
- 原因を探しても強迫行為はよくならないと知る
- 強迫行為をやめていくトレーニングが必要と知る
- たくさんの症状がある場合は、まず一つ小さな目標を持ち治していくように決める
- 小さな成功が自分の自信に繋がる
- ストレスを減らす
- セロトニンを分泌させる
- 体力をつける
- 生活習慣を見直す
- 確認してしまうのは、念のため確認している場合があるので、1か所でいいので、1回だけでも減らす
- 確認している場所の写真を撮る場合は、自分の目が信じられなくなるので、1か所でも写真を撮るのは減らす
- 手洗いをしてしまう場合は、少しでも時間を減らしたり、回数を1回でも減らしてみる
- ドアノブ、スイッチ、リモコンなど触れない人は、家族も触っているので1箇所でいいので素手で触って手洗いをしないようにする
- 物の順序、位置などのこだわり、無意味だとわかっていてもやってしまう儀式行動を1つでもいいので順序を変えてみたり、「まあいいか」とちょっと止めてみることを受け入れてみる
- 車の運転をしていて人を挽いてしまったと考えてしまう場合も、勇気をだして確認を1つでもいいので止めてみる
強迫性障害を克服するための心理療法
強迫性障害を克服するための概念として「エネルギーサークル」というものがあります。これは執着を手放す時に有効な考え方です。
まず、強迫行動を起こしたくなった時に自分の心や体について感じるというこをやっていきます。あなたはどの部分にどのような感じがしますか?
例えば手を洗いたくなった時は、「手の甲の部分にチリチリと痛みを感じる」「肩や首が緊張して張っているな~」などということです。これを感じてみてください。
次の段階では「気づく」ことです。あなたの感情にも目を向けてあげてください。肩が凝っていて「イライラしている」などという感じです。今までは辛すぎて自分の心の奥の方へ押しやって感じにくくしている方が多いのです。だから、ふとした時に同じ考えばかり浮かんできてしまい、解決できない問題として残ってしまっているのです。我慢ばかりしてきた自分に気づいてあげてください。
次の段階では実際の行動に移っていきます。罪悪感を持たずにやってみてください。スッキリしましたか?手を洗っていても不安になることもあるでしょうが、やってみてください。歌を歌いながら「この歌を一曲歌ったらできている」と自分で決めるという思い込みも大切です。ここで交感神経が終了します。
そして次の段階に入ります。ここからが副交感神経となります。他人に認められるということです。「家族の方に手洗いも見てもらう」「鍵をかけるのを家族にみてもらう」などです。ここで大切なのは無制限ではなく、「3回までね」というようにルールを決めることもオススメです。そうすることで家族の負担も少なくなります。
そして自己承認です。他人に認められたのだから自分でも「大丈夫」と思うようにします。
これができたら最終段階の「注意の引きこもり」つまり執着を手放すということになります。
強迫観念に対する認知行動療法の有効性
当院でうまくいった方法の1つです。自分のできたことをノートに書いてもらい、そのできたことを増やしていき、自分に自信を持ってもらう方法です。
少しづつハードルを上げていきながら克服を目指します。注意したいのは「焦らないこと」です。
強迫性障害を克服するための方法
暴露療法というものがあります。簡単にいうと「スパルタ療法」です。例えば汚れたかもしれないと強く思い手洗いをめっちゃしてしまう方がいたら、思い切って「手を洗わない」ように我慢して、ある程度は洗わなくても感染しないし病気にもならないと自分で確認し、それを覚え込ませます。そして、その状態を慣れさせるのです。
そこで手を洗わなくても「死なない」「何も起こらない」「不安なことはない」「病気にならない」ということを確認していくのです。
確認恐怖の方は、思い切って鍵をかけずに外出してみます。でも泥棒も入らないし、大丈夫だったと自分で確認することが大事なのです。(防犯面で危険なこともあるのでオススメはしませんが・・・)
ただし根気が必要です。苦手なことにワザと取り組むので覚悟が必要です。一人でするにはハードルが高いことが多いです。だから最初は家族の助けも必要です。
なかなか続けることが難しくモチベーションを維持することは余程の意思の硬い方でないと難しいといえますので専門家の元でするようにしていただくのをオススメします。
認知行動療法について
まずやっていっていただきたいのはあなたが今、不安に思っていることや状況を書いてみてください。
そして、それに嫌な度合点数をつけていきます。更に、その時の感情を感じていき、別の考えはないかを自分で考えます。その後、再度感情にアプローチしていくというやり方です。
- 外のトイレの便座に触れる(100点)
- 鳩の糞が自分にかかる(100点)
- 公園のベンチに座る(70点)
- 自宅の玄関に寝転ぶ(30点)
まずは自分の嫌なことをこのように書き出してみてください。
認知行動療法の進め方
例えば、こんなことがあったとします。
外出していて道路を歩いていると、鳩が電線にとまっているのを見ただけで自分に糞がかかったかもしれないと思った。
①嫌な気分になったのは
鳩の糞が自分について汚れてしまったかもしれないと思った。
②その時、どう思った?それは10段階の何点?
とっても嫌な気持ちになり居ても立っても居られない状態になった。無性に手を洗いたくなり、服も全部捨てたくなった。糞が落ちて自分に当たったら気づくはずなのに、当たっていないとわかっていても汚れているんじゃないかという「不安」が起こる。そして「何で私に糞がかかるの~」という怒りで「イライラ」した。不安は「9」だった。
③その時に浮かんだ考えは?
- 糞がかかった服を人に見られたら恥ずかしい
- 糞が当たったかもしれないと思うことが不安
- いつも綺麗にしているのに、私に糞がかかるのは物凄く腹が立つ
- なんであんなところに鳩がいるのとイライラする
④認知の偏りはあるかな
次のような自分の認知に偏りがあるか確認していきます。第三者的、客観的に自分を見つめなおします。
- 白黒思考・完璧主義
- 過度な一般化(決めつけ)
- ○○するべき思考
- 選択的抽出(心のフィルター)
- レッテル貼り
- 結論の飛躍(先読みしすぎ)
- すべて自分の責任
- ネガティブ思考
- 過大評価・過小評価
- 過度なこだわり・感情的決めつけ
ここでは糞が自分に当たっていないのに当たったと決めつけて、その気持ちになってしまっていることが問題です。
思考の歪みでは「感情的決めつけ」「結論の飛躍」「ネガティブ思考」などがこれに当たります。
これを冷静に判断して、「本当にそうなの?」と自分に問いただしてみます。
⑤他にできそうな考え方はないかな
当たったかもしれない部分を目でみたり触れてみたりして確認してみたら、確実に当たっていないことに気づいた。隣の家族や友人に同じように確認してもらったら「大丈夫」だと言ってもらえて安心した。
例えば「もしも糞が肩に当たったとしたら、当たった感覚があるはずだから気づくはずだ」と丁寧に確認していきます。
⑥新しく考えた時の感情はどんな感じかな
もう一度確認して納得できたら、少しづつ不安が減ってきます。先ほどよりも手洗いがしたい衝動は少し減ってきます。すると不安はあるが「5」くらいに減ってくるようになってきます。
このように冷静に確認して、「鳩の糞が自分に当たったら感覚で感じるはずだ」、そして当たっても、洗濯したら良いし、それほど汚くないかもしれないと少しづつ思えるようになってくるのです。
自分を客観的にみる訓練
心理学でディソシエイトというワークがあります。訓練で自分を客観的にみる訓練をします。そうすることで冷静になれますので、不安からパニックを起こすことも少なくなります。ですので強迫行為も少なくなるのです。
強迫性障害の再発予防法
再発の予防として、このように考えるように日頃から訓練しておいてください。
浮かんでくる考えやイメージを受け止めると決意してください。自信に満ちた言葉で決意してください。
例えば「それは私には関係ない」「間違っていてもかまわない」「完璧である必要はない」「今、この考えは役に立たない」などと自分自身に唱えるようにしてください。
不安を消すために体を調整することも非常に有効です。リラクセーションを優先してください。深呼吸、ヨガなど、良い姿勢、副交感神経を優位にする整体などもオススメです。
また新しい行動に注意を向けてみてください。脳の違う部分が働くことで、変化を感じられることもあります。
強迫性障害の再発を避ける方法とは?
ある考えに強く囚われることを恐れる時、あなたのカラダは防御態勢に入ります。その時にエプネフリン(アドレナリン:副腎髄質のホルモン)という化学物質を出します。これは強いストレスや刺激に備えるホルモンです。
分泌されますと筋肉が緊張し、心拍数があがり、呼吸も速くなり攻撃態勢に入ります。そして、色んな考えが浮かんできます。それと自分が安心するために手を貸してくれる人を探します。
手を洗う回数を家族に数えてもらったりして完璧さを要求し、それで安心するのです。ですが、それでも、なかなか安心することができなくなり、しばしば家族と喧嘩になったりしてしまいます。
これをコントロールするには自分で「気づく」ことが第1歩となります。強迫観念とは戦うことをやめて受け入れ、うまく受け流すことも時には必要なのです。
復職や社会復帰での再発予防
できるだけストレスを溜め込まず、相談することが大切です。一人で抱え込むと以前のように再発することが多いので注意してください。
人のことが気になりやすいので「たぶん、あいつ今ごろパフェでも食べてるよ」くらいの気持ちで過ごすようにしてください。ストレスからは逃げるか戦うかで対応しますので、逃げても良いということを理解してください。2時間以上連続で歩けるだけの体力が必要ですので運動を継続してやってください。
家族のサポート
強迫性障害の行為は感情の抑圧から行っていることが多いので「承認」してあげることが大切です。
同じ行動の繰り返しに対して「自分で勝手に確認したらいいだろう!」「毎日、毎日、同じことやらせるなよ!」といって怒鳴ったりしないようにお願いします。「もう大丈夫だって!」とは絶対に言わない方がいいです。
基本的にはその方の欲求を満たしてあげるようにするのがオススメです。本人は「したくないのにしてしまう行為」と感じていることが多いので、「あなたには今、これは必要な行為なんだから無理に止めようとしなくていいよ」と認めてあげるとラクになります。
参考文献:「家族に贈る強迫神経症の援助法」より
強迫性障害患者と家族のサポート
家族は「見守る」ということも大切です。無視ではなく「何も言わず、そっとしておく」という手法です。時には巻き込みに対して意識的に付き合うこともします。正し「1回だけ確認するからね」というように全て巻き込まれるのではなく、限定するということも大切です。
また手洗いの見本をみせるということも効果がある時があります。「あ!これくらいの手洗いで良いんや」と確認して納得してもらえることもあります。
また「かまいすぎる」という過干渉でも、症状の改善が難しいこともあります。できるだけ、だまってアドバイスなども過剰にせず見守るようにしてください。
家族が気をつけるべきポイント
まず家族は強迫性障害の特徴を知っておくことが重要です。普通からしたらできているようなことも何度も確認しないと気が済まない病気ですので、理解が必要なのです。
止めたいと思っても止められないのです。例えば「蚊にさされた時に、かいたら腫れるのはわかっているのに、かゆい部分をかかずにいられない」というような感覚です。
だから本人が克服するために頑張っていることを認めて褒めてあげてください。
またリフレーミングを使う事も時には必要です。リフレーミングとは「言い換え」です。ネガティブなことでもポジティブに言い換えることで客観的に物事をみることができるようになり少しストレスも減ります。
リフレーミング
例えば、このように言い換えてみてください。少し心が軽くなりますよ。
ネガティブな言葉 | 言い換えると |
---|---|
何度言ったらわかるの? | どうしたら良いと思う? |
完璧主義 | 職人気質、責任感が強い |
小さなことにクヨクヨする、心配性 | 細かい事に良く気が付く、繊細で優しい |
集中力がない、気が散りやすい | 好奇心が旺盛、視野が広い |
好き嫌いが激しい、偏屈 | 感受性が強い |
人付き合いが苦手 | 自立心が強い、自分と向き合える |
失敗が多い | 挑戦したことが多い |
コンプレックスが強い、多い | ポテンシャルが高い、信念が強い |
普通、これと言った取柄がない | 安定している、バランス感覚に優れている |
できないことが多い | できない人の気持ちがわかる、合わせる |
強迫性障害の家族への理解と支援
理論的に説明しても納得できないことが多いのも知っておいてください。
例えば「外出していて帰ってきた時に着ていた服を家に入った瞬間に洗濯しなければ汚い」と思ったとします。「その服に菌が付いていても、病気になったことはないでしょ」と説明しても「頭ではわかっているけど汚いと感じてしまう」と納得できないのです。
すると「私の苦しみはわかってもらえない」というように関係性が崩れることもあるのです。
これには「確かに大丈夫だった」という体験をするとが必要です。自分で体験することで大丈夫と思えてくるのです。
また少しづつできることが増えてきますので、お互いに確認していってください。少しづつでも前に進んでいると理解できたらモチベーションが維持しやすくなって、更に前に進むことができます。
そして「苦しいよね」と共感することが解消への階段を上っていくことになります。
家族からの指示
「I(アイ」メッセージで話す
「お母さんは○○して欲しい」
具体的な指示を出す
「して欲しくない」ことではなく「して欲しい」ことを言う
ゲームばっかりしない、スマホばっかりしない
↓
たまには外で散歩してきたら
日常生活での再発を防ぐためのヒント
ストレスが強くなったり、体力が減ったりすると再発することがありますので寝不足になったりしないように注意してください。
自分で問題を克服すると決意
「自分で克服できるんだ」と自分を信じることです。信じ続けることが信念となります。
これには根拠がないと気づく
自分の強迫的な心配や不安は、かなり誇張されたものであると理解してください。オレオレ詐欺にあった感覚で、心の声が聴こえたら、「詐欺だから無視しよう」と考えてみてください。少し冷静に客観的にみるようにできるとラクになります。
この行為が唯一の方法ではないと気づく
他のやり方が効果的かもしれないと思うことが、強迫行為を取り除く第一歩です。パターンを変えると不安が少なくなって、うまくいく時もあります。また、あの行為をしなくても大丈夫だと気づくことにもなります。
強迫観念を受け入れる
非現実的だと思いながら、認めることも必要です。逆らえば逆らうほど、より長い時間、心の中に留まるからです。時には受け入れて受け流すようにしてみてください。
薬で良くなった場合の注意点
薬でよくなった場合、薬をやめると中止後2~3カ月で半分以上は再発することが多いので注意してください。
参考文献:「強迫性障害を自宅で治そう」より
不安を和らげる体操
エクスポージャーという暴露療法
実際に「嫌」だと感じるものに触れてどう感じるかを確認していきます。ただし専門家の元でされることをオススメいたします。
例えば、ドアノブが嫌だとして、それに実際に触れてみて、想像していたのと実際に差があるかどうかを確認していきます。最初に想像していたのと少し違うなと感じたり、頭で考えていたことと実際には差があるもんだと感じれたら、このテストは成功です。
チャレンジ項目 | 嫌に思うレベル | 体の感覚 | 身体の感覚強度 |
---|---|---|---|
トイレのドアノブを触る | 80 | ゾワゾワ、ドキドキ | 60 |
玄関の土間 | 50 | ゾワゾワ | 50 |
台所のシンク | 85 | ゾワゾワ、ウワー、ゲー | 90 |
風呂場の残り湯 | 90 | ゲー、ゾワゾワ | 90 |
家族の下着 | 60 | ゲー、ゾワゾワ | 75 |
便器 | 95 | ゾワゾワ、ドキドキ、ギュワー | 85 |
トイレの床 | 95 | ゾワゾワ、ドキドキ、ギュワー | 80 |
雨に濡れた服 | 80 | ギュー、ドキドキ | 85 |
エクスポージャーや認知行動療法などは、専門の医師やカウンセラーにしていただいてください。
これらを実践するには、ご自身の決意が必要です。
バンジージャンプのように思い切りが必要です。以下の3つの条件が必要となります。
- 自分の綺麗な体など今まで守ってきたものよりも大切にしたい何かはありますか?
- それでも自分でやってみようという意志がありますか?
- 家族の協力はありますか?
白黒思考が強い方が多いので、「あいまいな物」と「ハッキリした物」を交互に触れてみて、大丈夫だということを少しづつ確認していくようにチャレンジしてみてください。少しづつ慣れてきて不安が減ってきます。
強迫性障害と日常的な行動パターン
強迫行動が酷くなると「やる事」「ルーティン」が増えていったりします。
例えば手を洗うという行為でも「数を数える」「歌を歌う」「お祈りをする」「3回確認したから大丈夫というような感じで自分で保証する」などのパターンになることが多いです。
そして家族を巻き込んで同じようなルーティンを強制することも多いです。何度も確認させらることもあります。家族もルールを決めて「3回だけ確認に付き合う」というルールにするのもオススメです。
強迫性障害との闘い方
洗浄強迫では過剰な手洗いは逆に不潔になることがあることも認識してもらいます。
過剰に手を洗う事で手の皮脂が落ちてしまうこともあります。また洗いすぎると常在菌で良い菌まで死滅してしまい、皮膚のバリアが薄くなってしまうかもしれません。
消毒のしすぎは逆に感染症にかかりやすくしてしまうのです。
リスクに耐える力をつける
例えばあなたは医師から「あなたの病気は手術をしなければ余命1年です。しかし今すぐ手術をすれば95%の確率で助かります」と言われたとします。
あなたならどう考えますか?
強迫性障害の方は5%の手術失敗の確率を気にしすぎて怯えてしまいます。つまり手術を選ぶメリットを選べなくなってしまうことが多々あります。
リスクが「0」ということは物事にはなかなか存在しないものだと理解するようにしてください。
これを少しづつ耐えられるようになってくることで解消に向かうのです。
「普通」に執着せずメリットがあるかどうかで判断
強迫性障害の方は「普通」がわからなくなります。例えば、外から帰ってきたら手を洗うのは普通なのかがわからなくなってしまうのです。
これをメリットがあるかどうかで判断してみると「さっさと1回だけ手を洗ったら、すぐにおやつを食べることができる」とメリットで考えるようにするのです。
「何度も手を洗う」、もしくは「普通の人は手をどのくらい洗うのだろう」などと考えすぎると時間も経過しますし、思考がグルグル回り気持ち悪さだけが残って、いつまでも手洗いを終えることができなくなるのです。
まとめ
- 自分の特徴、性格、パーソナリティを理解する
- この病気は脳の問題だと理解する
- 違うことを考えてパターンの中断をする
- 家族のサポートも受ける
- 再発防止のためにストレスを減らし体力をつける
- 執着せず、できるだけ気にしないようにする