
「ちゃんと寝ているのに朝からだるい」
「食欲がなく、朝ごはんもほとんど食べられない」
「ダイエットで食事を減らしてから、冷えや疲れが強くなった」
「血液検査では大きな異常はないと言われた」
このようなお悩みはありませんか?
疲労感や冷え、気力の低下にはさまざまな原因がありますが、その一つとして知っておきたいのが低T3という状態です。
私も分子栄養学を学ぶ中で、少食や食欲不振、極端な食事制限が続いている方では、食事量だけでなく甲状腺ホルモンの状態も考えることが大切だと学びました。
ただし、「朝食を抜くと低T3症候群になる」という単純なものではありません。
この記事では、低T3とは何なのか、甲状腺機能低下症との違い、食事との関係、どのような検査をするのかについて、できるだけ分かりやすく解説します。
そもそもT3とは?
甲状腺は首の前側にある小さな臓器です。
甲状腺からは主にT4というホルモンが作られます。
そのT4が肝臓や腎臓など身体のさまざまな場所で、より活性の高いT3へ変換されます。
T3は、
- エネルギー代謝
- 体温
- 心拍
- 筋肉
- 脳の働き
など、全身の働きに関係しています。
そのため甲状腺ホルモンの状態に変化があると、だるさ、冷え、気力低下など、さまざまな症状がみられることがあります。
ただし、これらの症状は睡眠不足、貧血、感染症、うつ状態、更年期、栄養不足などでも起こります。
症状だけで「甲状腺が原因」と判断することはできません。
低T3症候群とは?
低T3症候群は、甲状腺そのものに明らかな病気がなくても、血液中のT3が低くなる状態です。
医学的には非甲状腺疾患症候群、NTISなどと呼ばれます。
典型的には、
- T3が低い
- TSHは正常〜低め
- T4は正常〜低値
といったパターンがみられます。
重い病気や手術後などでよく知られていますが、飢餓や長期間のカロリー不足でもT3が低下することがあります。
身体からすると、エネルギーが十分入ってこない時に代謝を少し落として、エネルギー消費を抑えようとしているとも考えられています。
いわば身体の「省エネモード」です。
朝ごはんを抜くと低T3になるの?
ここは誤解しないでいただきたいところです。
朝ごはんを1回抜いたから低T3になるわけではありません。
朝食を食べない人でも、昼食や夕食で必要なエネルギーや栄養を十分摂れている場合もあります。
問題になりやすいのは、
- 朝食をほとんど食べない
- 昼食も少ない
- 夕食だけしっかり食べる
- 食欲不振が続いている
- 極端な糖質制限をしている
- 長期間ダイエットをしている
- ファスティングを繰り返している
などによって、1日全体のエネルギー摂取量が不足している場合です。
長期間のカロリー制限や飢餓状態では、T4からT3への変換が低下し、血中T3が低下することが報告されています。
つまり大切なのは、「朝食を食べたか、食べていないか」だけではなく、「一日を通して身体に必要なエネルギーや栄養が入っているか」を見ることです。
あなたの必要摂取カロリーはこちらから調べてみてください。
食欲不振が続いている方にも注意してほしい
当院には、「気分が落ち込んで食べられない」「不安が強くて食欲がない」「胃が気持ち悪くて朝は食べられない」という方も来院されます。
うつ状態や強い不安があると食欲が低下することがあります。
そして食事量が減ると、
- エネルギー不足
- たんぱく質不足
- 鉄や亜鉛などの栄養不足
が重なり、さらに疲れやすい、集中できない、身体を動かすのがつらいという状態につながることがあります。
すると、
気分が落ちる
↓
食べられない
↓
身体が疲れる
↓
動けない
↓
さらに気分が落ちる
という悪循環になることもあります。
もちろん、食事を増やせばうつ状態が治るという意味ではありません。
ただ、食欲不振が長く続いている場合には、心の問題だけでなく、体重の変化や栄養状態、甲状腺、貧血なども一緒に確認することが大切です。
低T3症候群と甲状腺機能低下症は同じではありません
ここも非常に大切です。
低T3症候群と、橋本病などによる甲状腺機能低下症は同じものではありません。
| 項目 | 低T3状態・NTIS | 甲状腺機能低下症 |
|---|---|---|
| 甲状腺そのもの | 正常な場合もある | 甲状腺の機能低下がある |
| TSH | 正常〜低値が多い | 高値になることが多い |
| T3 | 低値 | 低値になることがある |
| FT4 | 正常〜低値 | 低値になることが多い |
| 原因 | 重い病気、飢餓、カロリー不足など | 橋本病、甲状腺炎など |
| 対応 | 原因となる状態の評価 | 医療機関で甲状腺治療 |
橋本病では、TSHやFT4に加えてTPO抗体などを調べることがあります。
この違いを自己判断するのは難しいので、気になる場合は内科や内分泌内科、甲状腺を診ている医療機関で確認してください。
どんな検査を確認する?
甲状腺の状態を見る時には、主に次のような血液検査があります。
TSH
脳の下垂体から出るホルモンで、甲状腺に「ホルモンを作ってください」と指示を出します。
一般的な甲状腺機能低下症ではTSHが高くなることが多いです。
FT4
甲状腺から作られるT4のうち、身体で利用できる遊離型を調べます。
FT3
T3の遊離型です。
ただし甲状腺疾患の診断はFT3だけで判断するものではありません。
TSH、FT4、症状、既往歴、服薬、体重変化などを合わせて医師が判断します。
「TSHが正常だから大丈夫」とも限らない?
一般的な甲状腺疾患のスクリーニングではTSHが非常に重要です。
ただし、強い病気や極端な栄養不足などでは、甲状腺そのものが悪くなくてもT3が低下することがあります。
そのため、「食事量がかなり減っている」「短期間で体重が大きく減った」「強い疲労感が続いている」などの場合には、現在の食事量や体重変化についても医師に伝えることが大切です。
少食の方は、いきなりたくさん食べなくていい
食欲が落ちている方に、「朝からご飯をしっかり食べましょう」と言っても難しいことがあります。
無理に大量に食べる必要はありません。
例えば、
- バナナ
- 小さなおにぎり
- 卵
- ヨーグルト
- 豆腐
- 味噌汁
- 魚
- 少量のお肉
など、食べられるものから少しずつ増やしていく方法があります。
一度に食べるとつらい方は、
朝
↓
午前の補食
↓
昼
↓
午後の補食
↓
夕食
というように分けてもかまいません。
大切なのは完璧な朝食を作ることではなく、「身体に必要なエネルギーを少しずつ戻していく」という考え方です。
たんぱく質だけではなくエネルギーも必要
栄養というと、「肉を食べよう」「プロテインを飲もう」と、たんぱく質だけに注目しがちです。
もちろんたんぱく質は大切です。
しかし身体はエネルギーが足りないと、摂取したたんぱく質を身体を作る材料だけではなく、エネルギー源として使うこともあります。
そのため、
ご飯などの炭水化物
+
肉・魚・卵・大豆などのたんぱく質
+
野菜や海藻など
を極端に避けず、無理のない範囲で食べることが基本になります。
低T3を自分で治そうとしないでください
低T3が気になるからといって、自己判断で甲状腺ホルモンを使うものではありません。
非甲状腺疾患症候群に対して甲状腺ホルモンを投与することは、一般的に推奨されていません。
重要なのは、「なぜT3が低くなっているのか」を確認することです。
- 病気が隠れているのか
- 食事量が少ないのか
- 大きく体重が減っていないか
- 薬の影響はないか
こうした背景を医療機関で確認することが先です。
このような場合は医療機関へ
次のような場合には、整体より先に医療機関へご相談ください。
- 急激な体重減少がある
- 強いむくみがある
- 脈が極端に遅い、または速い
- 強い動悸や息苦しさがある
- 食事がほとんど摂れない状態が続く
- 強いうつ状態がある
- 日常生活ができないほどの疲労感がある
- 甲状腺の腫れが気になる
甲状腺の病気は症状だけでは判断できません。必要に応じて血液検査を受けることが大切です。
当院でできること
おおくま整骨院では、低T3症候群や甲状腺疾患の診断・治療はできません。
甲状腺に問題が疑われる場合には、医療機関での検査をおすすめします。
そのうえで、「食欲が落ちている」「疲れすぎて食事を作れない」「不安が強くて胃が動かない感じがする」「睡眠も食生活も乱れている」という方には、
- 現在の食事量
- 食事回数
- 睡眠
- ストレス
- 運動
- 身体の緊張
- 胃腸の状態
などを一緒に整理していきます。
整体で低T3そのものを治すという考え方ではありません。
身体の緊張をやわらげながら、食事・睡眠・生活習慣を見直し、必要な医療につなげることも含めてサポートしています。
まとめ|朝食だけではなく「一日の食事量」を見てみよう
低T3という状態は、甲状腺そのものの病気だけでなく、重い病気や飢餓、長期間のカロリー不足などでもみられることがあります。
大切なのは、「朝ごはんを抜いたから低T3になった」と決めつけることではありません。
- 朝食を食べていない
- 昼も少ない
- 夕食しか食べられない
- 食欲不振が数か月続いている
- ダイエットで食事をかなり減らしている
こうした状態が続いているのであれば、一度「一日を通してどのくらい食べられているのか」を見直してみてください。
だるさや冷え、気分の落ち込みが続いている場合には、我慢するのではなく医療機関で確認することも大切です。
食事は薬ではありません。
しかし、身体を動かすためのエネルギーや材料を毎日身体に届けることは、回復を考えるうえで大切な土台の一つです。
参考文献・出典
- NIDDK「Thyroid Tests」
- NIDDK「Hypothyroidism」
- NIDDK「Hashimoto’s Disease」
- American Thyroid Association「Nonthyroidal illness syndrome」
- Hennemann G, et al. Causes and effects of the low T3 syndrome during caloric deprivation and non-thyroidal illness.
- De Vries EM, et al. Abnormalities of Thyroid Hormone Metabolism during Systemic Illness.



