▶▶ご相談・ご予約

「わかっているつもり」が人間関係をこじらせる?不安が強い人に知ってほしいコミュニケーションのバイアス

「わかっているつもり」が人間関係をこじらせるコミュニケーションのバイアスを表したイラスト

「LINEの返信が遅い。嫌われたのかな」
「夫の返事がそっけない。何か怒っている?」
「お母さんは昔から私の話を聞いてくれない」
「どうせ言っても、わかってもらえない」

人間関係で、こんなふうに考えたことはありませんか?

相手が本当にそう思っているか確認していなくても、私たちは無意識に相手の気持ちを予想しています。

特に不安が強くなっていると、「何か変なことを言ったかな」「嫌われたかもしれない」「私が悪かったのかも」と、悪い方向へ考えが進んでしまうこともあります。

でも、ここで一つ大切なことがあります。

自分がそう感じたことと、実際にそうであることは同じではありません。

今回は、夫婦、親子、友人、職場など、誰にでも起こる「思い込み」について考えてみたいと思います。

私たちは誰でも思い込みながら生活している

心理学では、物事の見方や判断に生じる偏りを「バイアス」と呼びます。

難しく考える必要はありません。

たとえば、「この人はいつもこうだから、今回も同じだろう」「前に失敗したから、今回もうまくいかないだろう」というのも、過去の経験から未来を予測している状態です。

こうした予測そのものが悪いわけではありません。

毎回すべてを一から考えていたら疲れてしまいます。

問題になりやすいのは、「たぶんそうだろう」が、「絶対にそうだ」へ変わってしまうことです。

『FACTFULNESS』を読んで感じた「思っていた世界」と現実の違い

以前、『FACTFULNESS』を読んだとき、私はとても驚きました。

世界の貧困、教育、健康などについて、「当然こうだろう」と思っていたことが、実際のデータを見ると違っていたからです。

この本では、人は悪い情報に注意が向きやすかったり、一部の出来事を全体に当てはめたりすることが紹介されています。

つまり、「自分にはこう見えている」ことと、「実際にどうなのか」は違うことがあるのです。

これは世界情勢だけではなく、人間関係にも当てはめて考えることができます。

「私はそう感じる」と、「相手が実際にそう思っている」は別なんです。

ここを分けるだけでも、人とのすれ違いは少し見え方が変わったりします。

実は親しい人ほど「わかっているつもり」になる

『LISTEN』という本に、とても興味深い話が出てきます。

「近接コミュニケーション・バイアス」という言葉です。

簡単にいうと、親しい相手ほど「自分の言いたいことは伝わっている」「相手のことはわかっている」と過信してしまうことがある、という考え方です。

たとえば、初対面の人から、「今日はいつもと違いますね」と言われたら、「どういう意味ですか?」と聞くかもしれません。

ところが夫婦なら、「何、その言い方」となることがあります。

娘から何か言われると、「はいはい、また文句を言いたいんでしょ」と、相手が説明する前に意味を決めてしまうこともあります。

知らない人には確認するのに、親しい人には確認しない。

ここが面白いところなんですよね~。

長く一緒にいることで、その人の性格や好みはわかってきます。

でも、「その人をよく知っていること」と、「今、その人が何を考えているか」は同じではないんですよ。

家族だからこそ起こったすれ違い

実際にご相談の中でも、家族関係についてのお悩みを聞くことがあります。

ここでは個人が特定されないよう、家族構成や状況や環境を変更してご紹介します。

あるご家族で、母親と三女が言い合いになりました。

その後、長男と三女の夫の関係までぎくしゃくしてしまいました。

それぞれのお話を聞いていると、「昔からあの人はそう」「きっと、こういう意味で言ったんだと思う」「どうせ言ってもわかってくれない」と、お互いが相手の気持ちを予測していました。

ところが、「本当はどういう意味だったの?」「私はこう受け取ったけど、合ってる?」という確認は、ほとんど行われていませんでした。

家族だから相手をよく知っていますよね。

でも、その「知っている」が強くなるほど、今、目の前にいる相手の言葉より、「私の知っているこの人なら、こういう意味に違いない」という解釈が先に出てしまうことがあります。

ケンカは「言ったこと」より「受け取り方」から大きくなることがある

人間関係では、こんな流れが起こることがあります。

  • 相手が何かを言う
  • 自分なりの意味をつける
  • 昔の嫌だった出来事を思い出す
  • 「やっぱりこの人はこういう人だ」と感じる
  • 怒りや悲しみが強くなる
  • 強い言葉で返してしまう

すると相手も、「やっぱり自分のことをわかってくれない」と感じます。

こうして、最初は小さな出来事だったものが大きなケンカへ発展することがあります。

「ほら、やっぱり」を探す確証バイアス

もう一つ知っておきたいのが「確証バイアス」です。

たとえば一度、「あの人は私を嫌っている」と思ったとします。

すると、優しくされたことよりも、少し冷たい返事が気になります。

LINEを返してくれた10回より、返信が遅かった1回の方が強く残ることもあります。

そして、「ほら、やっぱり嫌われている」と考えてしまうんです。

不安が強いときには、あいまいな出来事を悪い方向へ受け取りやすくなることがあります。
だから自分の最初の考えに合うようなマイナスの情報を集めやすくなっているのです。

夫婦でも、「主人は私の話を聞いてくれない」と思っていると、話を聞いてくれた日は忘れて、聞いてくれなかった日の方が強く記憶に残ることがあります。

誰にでも起こりうる心のクセです。(私にもあります💦)

不安が強いと「悪い意味」に結びつけやすいことがある

不安が強い方の場合、意味がはっきりしない出来事を悪い方向へ考えてしまうことがあります。

たとえば、「LINEを送って3時間返事がない」とします。ここまでが確認できる事実です。

でも頭の中では、「何か変なことを言った?」「怒っている?」「嫌われた?」と話が頭の中でどんどんどんどん進んでいきます。💦

相手の方は、実際には仕事中かもしれません。スマホを見ていないだけかもしれません。返信を考えている途中かもしれません。もちろん、本当に怒っている可能性もゼロではありません。

だから、「絶対大丈夫」と無理にポジティブに考える必要もありません。

大切なのは、「今はまだ、わからない」という選択肢を残しておくことです。

「事実」と「想像」を分けてみる

人間関係で不安になったら、一度こう考えてみてください。

起きている事実自分の中で考えたこと
LINEの返信が3時間ない嫌われたかもしれない
夫があまり話さない私に怒っている
娘の返事が短い私を嫌っている
上司の顔が険しい私が何か失敗した

右側の考えが浮かぶこと自体は悪いことではありません。

不安になったときは、次の3つを確認してみてください。

  • これは事実?それとも私の想像?
  • ほかの可能性はない?
  • 本人に確認できない?

これだけでも、頭の中で作ったストーリーと現実を分けやすくなります。

「私はこう受け取ったけど、合ってる?」

もう一つ、とても使いやすい言葉があります。

「合ってる?」です。

「どうせ怒ってるんでしょ」ではなく、「今日ちょっと元気がないように見えたけど、疲れてる?」「あなたはいつもそう」ではなく、「私はこういう意味に受け取ったけど、合ってる?」と聞いてみる。

自分の感じ方を否定する必要はありません。

「私はこう感じた」と伝えながら、「あなたはどうだった?」と相手の答えが入る余白を残すことが大切です。

相手を理解することは、相手に賛成することとも違います。

「私はそう思わないけれど、あなたにはそう感じたんだね」という関わり方もできます。

当院でも「わかったつもり」にならないことを大切にしています

これは私自身も気をつけたいことです。

長く来院されている方でも、「前回こうだったから、今回も同じだろう」とは限りません。

睡眠、仕事、家庭環境、身体の状態、気持ちは毎日変化します。

だから、「今日はどうですか?」「最近、何か変わったことはありませんか?」と、その日の話を聞くことを大切にしています。

人を知るということは、「この人はこういう人」と決めることではなく、「今日はどうなんだろう」と関心を持ち続けることなのかもしれません。

よくある質問

Q
バイアスがあるのは悪いことですか?
A

バイアスそのものが悪いわけではありません。

過去の経験を使って判断することは、人にとって自然な働きです。

大切なのは、自分の予測と事実を同じものとして扱わないことです。

Q
相手の気持ちを悪い方向へ考えてしまいます
A

まず、「今、私は不安になっている」と気づいてみてください。

そのうえで、「実際に確認できていることは何だろう?」と考えると、気持ちと事実を分けやすくなります。

不安やパニックが強く、生活への影響が大きい場合には、医療機関など専門家への相談も大切です。

Q
本人に確認すると、かえってケンカになりませんか?
A

聞き方によって印象は変わります。

「怒ってるんでしょ」と決めつけるより、「私は少し怒っているように感じたんだけど、合ってる?」と、自分の受け取り方として確認する方法があります。

Q
親子で絶縁状態になってしまったら、どうすればいいですか?
A

相手が距離を置きたいと伝えている場合は、まずその気持ちを尊重することが大切です。

「あなたのために言った」「そんなつもりではなかった」と説明したくなるかもしれませんが、相手が距離を置きたいと伝えている場合は、まずその気持ちを尊重します。話せる機会ができたときには、こちらの考えを説明する前に、相手がどう感じていたのかを聞くことが大切です。

すぐに関係を戻そうとせず、「今は距離を置きたい気持ちを尊重します。もし話せる日が来たら、こちらの考えを伝える前に、あなたの話を聞きたいです」と伝えて、少し時間を置く方法もあります。

Q
相手のことを考えて良かれと思ってやっても、うまくいきません。どうしたらいいですか?
A

「良かれと思って」は善意でも、相手が望んでいることとは限りません。

何かしてあげる前に、「何か手伝ってほしい?」「話を聞くだけの方がいい?」「あなたはどうしたい?」と確認してみてください。

助けることよりも、本人が選べる余地を残すことが、よいコミュニケーションにつながる場合があります。

まとめ

私たちは誰でも思い込みをします。

思い込みをゼロにする必要はありません。

大切なのは、「もしかすると、これは私の解釈かもしれない」と気づくことです。

  • 親しい人ほど「わかっているつもり」になることがある
  • 一度思い込むと、その考えに合う情報が目につきやすくなる
  • 不安なときは「事実」と「想像」を分けてみる
  • わからないことは「まだわからない」でいい
  • 「私はこう受け取ったけど、合ってる?」と確認してみる

知っている相手だからこそ、もう一度聞いてみる。

その小さな確認が、夫婦や親子、友人とのすれ違いを減らすヒントになるかもしれません。

LINEからご予約・ご相談はこちら

関連記事

参考文献

  • 『LISTEN――知性豊かで創造力がある人になれる』:ケイト・マーフィ
  • 『FACTFULNESS』:ハンス・ロスリング、オーラ・ロスリング、アンナ・ロスリング・ロンランド