
「昼間はそれほど気にならないのに、夜になると耳鳴りが大きく感じる」
「エアコンの室外機の音や時計の音が夜になると気になる」
「聴力検査では問題ないと言われたのに、人の声が聞き取りにくい」
「首やあごを動かすと、耳鳴りの音が変わる気がする」
「補聴器をつけても、周りの音までうるさくなってしまう」
耳鳴りや難聴について当院でこのような相談を受けることがあります。
耳鳴りという名前から、「耳の中で何かが鳴っている」「耳が悪くなったから耳鳴りがする」と思われがちです。
耳鳴りには、耳の病気や難聴だけでなく、耳から入った音を脳がどう受け取るか、周囲の音、首やあごから入る感覚、睡眠やストレスなど、さまざまな要素が関係します。
今回は、実際によくある5つの悩みをもとに、耳鳴りや聞こえについてわかりやすく解説します。
- 耳鳴りが長く続いている
- 夜や静かな場所で耳鳴りが気になる
- 聴力検査では問題ないのに聞き取りにくい
- 首やあごを動かすと耳鳴りが変わる
- 補聴器やイヤホンについて知りたい
※突然、片耳が聞こえにくくなって耳鳴りが出た場合は、様子を見続けず耳鼻咽喉科へ相談してください。突発性難聴では早めの評価が大切です。また、耳鳴りと一緒に、ろれつが回らない、顔や手足が動かしにくいなど急な神経症状がある場合は、救急受診を優先してください。
夜になると耳鳴りが気になるのはなぜ?
こんな経験はないでしょうか。
「仕事をしている昼間は忘れているのに、布団に入った途端に耳鳴りが気になる」
「静かな部屋になると、ピーッという音ばかり聞こえて眠れない」
ここで知っておいてほしいことがあります。
知らんかった① 耳鳴りの「音の大きさ」と「つらさ」は同じではない
夜に耳鳴りが強く感じても、必ずしも耳の状態が急に悪くなったとは限りません。
昼間は、
- 人の声
- 車の音
- テレビ
- エアコン
- 仕事中のさまざまな音
などに囲まれています。
ところが夜になって周囲が静かになると、外から入ってくる音が減ります。
すると、同じ耳鳴りでも相対的に目立ちやすくなります。
さらに、「また鳴っている」「今日も眠れなかったらどうしよう」と耳鳴りを何度も確認すると、注意がそこへ集まり、より強く感じることがあります。
夜の完全な無音がつらい方は、雨音などの小さな環境音を試してみるのも一つです。
また、睡眠不足や強いストレスが続いているときに耳鳴りをつらく感じる方もいます。
耳鳴りには、自律神経の状態が大きく影響することがあります。
疲労や睡眠不足、不安、緊張が続くと交感神経が働きやすくなり、身体が休まりにくくなります。
すると、
「疲れた日に耳鳴りが強くなる」
「緊張すると気になる」
「夜になると耳鳴りが気になって眠れない」
ということが起こりやすくなります。
耳鳴りを考えるとき、自律神経はとても大切な視点の一つです。
聴力検査では問題ないのに、なぜ聞き取りにくい?
「聴力検査で引っかかったことはないのに、仕事場やカフェなど騒がしい場所では相手が何を言っているのかわからない」という相談があります。
知らんかった② 「聞こえる」と「聞き取れる」は別
病院などで行う一般的な聴力検査では、「ピーという音が聞こえるか」を調べます。
しかし日常生活では、ただ音が聞こえればいいわけではありません。
例えばカフェでは、
BGM
隣の人の話し声
食器の音
エアコンの音
などが同時に耳へ入ってきます。
その中から目の前の人の声を選び、「何を言っているのか」まで理解しなければなりません。
つまり、耳で音を受け取ることと、脳が必要な音を選んで言葉として理解することは同じではありません。
そのため、「テレビの音は聞こえるけれどセリフがわかりにくい」「静かな場所なら聞こえるけれど、人混みでは会話が難しい」ということがあります。

首やあごを動かすと耳鳴りが変わることがある?
「耳鳴りなのに、首やあご?」
ここは今回の記事で、一番意外に感じるかもしれません。
一部の方では、
- 首を動かす
- 口を大きく開ける
- 歯を噛みしめる
- 頭や目を動かす
といった動作によって、一時的に耳鳴りの高さや大きさが変化することがあります。
知らんかった③ 耳鳴りなのに「耳以外の感覚」が影響する人がいる
このような耳鳴りは、体性感覚性耳鳴りと呼ばれています。
例えば、
- 首を右へ向くと少し大きくなる
- 口を開けると音の高さが変わる
- 噛みしめると耳鳴りが強く感じる
という人がいます。
これは、耳から入る聴覚情報だけでなく、首やあごなどから入る体性感覚の情報が、脳の中で耳鳴りの感じ方に影響している可能性があるためです。
首やあごを動かしたときに耳鳴りが変化する方では、耳だけでなく、首やあごから脳へ入る感覚も確認することが大切です。
「耳鳴りなのに首やあご?」と思うかもしれませんが、身体から入る感覚が耳鳴りの感じ方に影響することがある。これが体性感覚性耳鳴りの興味深いところです。

補聴器をつけても全部うるさいのはなぜ?
こんな相談もあります。
「補聴器をつけると確かに音は大きくなる。
でも人の声だけではなく、
「周りの音まで全部大きくなってうるさい」
「高い補聴器にしたらもっと聞こえるの?」
「両耳につけた方がいいの?」
知らんかった④ 補聴器は単に「音を大きくする機械」ではない
補聴器は、その人の聴力や生活環境に合わせて調整して使います。
現在の補聴器には、機種によって、
- 周囲の雑音を抑える
- 前方の声を聞き取りやすくする
- 環境に合わせて音を調整する
などの機能があります。
それでも、つけた瞬間から若い頃と同じように何でも聞き取れるとは限りません。
特に難聴では、音が大きくなれば言葉も同じようにはっきりするとは限らないためです。
両耳に補聴可能な難聴がある場合、両耳に補聴器を使用することで、騒音の中で言葉を聞き取りやすくなったり、音がどちらから来ているのか判断しやすくなったりする利点があります。
そして、補聴器は耳鳴りとも関係します。
難聴を伴う耳鳴りでは、補聴器によって周囲の音が入りやすくなることで、耳鳴りが以前より目立ちにくくなる方もいます。

イヤホンを使うと耳鳴りや難聴になる?
「イヤホンをよく使っていたら、左右で聞こえ方が違う気がする」という相談も実際にあります。
イヤホンで大切なのは、使うこと自体よりも「どれくらいの音量で、どれくらい長く聞いているか」です。
知らんかった⑤ 大切なのは「音量 × 時間 × 頻度」
WHOは、耳への負担について、どのくらい大きな音を、どのくらい長く、どのくらい繰り返して聞くかが重要だとしています。
例えばWHOの目安では、
| 音の大きさ | 安全に聞ける時間の目安 |
|---|---|
| 80dB | 週40時間 |
| 90dB | 週4時間 |
| 100dB | 週20分 |
音が10dB大きくなるだけでも、安全に聞ける時間は大きく短くなります。
耳を守るために大切なのは、大音量を長時間聞き続けないことです。
WHOでは、個人用の音楽機器では最大音量の60%以下を一つの目安とし、騒がしい場所ではノイズキャンセリング機能を使って、必要以上に音量を上げないことも勧めています。
耳鳴りや聞こえのために今日からできること
耳を守るために、まずは日常生活の基本から見直してみましょう。
- 大音量を長時間聞かない
- イヤホンは音量と使用時間を意識する
- ライブや大きな機械音などでは耳を保護する
- 睡眠不足が続かないようにする
- 夜の無音がつらければ、小さな環境音を試してみる
- 食いしばりや首・肩に力が入り続けていないか確認する
そしてもう一つ大切なのが、「耳鳴りを消さなければ」と一日中確認し続けないことです。
耳鳴りがあるかどうかを何度も確認すると、そのたびに注意が耳鳴りへ戻ります。
耳鳴りそのものをゼロにすることだけではなく、「耳鳴りがあっても気にならない時間を増やしていく」という考え方も大切です。
整体でできること・できないこと
整体院では、耳の病気を診断したり、難聴そのものを治療したりすることはできません。
- 首を動かすと耳鳴りが変化する
- 食いしばりが強い
- 首や肩の緊張が強い
- 睡眠不足や身体の緊張が続いている
このような方では、耳だけでなく身体全体の状態を確認することが大切です。
当院では、
- 首やあごの緊張
- 身体の力の入り方
- 呼吸
- 睡眠
- 生活習慣
などを確認しながら、その方にとって負担になっているものを一緒に整理していきます。
耳鳴りや聞こえにくさが続くときは
「年齢だから仕方ない」「検査をしても何もないだろう」と決めつける必要はありません。
特に、
- 片耳だけの耳鳴りが続く
- 脈に合わせてドクドク聞こえる
- 以前より聞こえにくくなっている
- 左右で聞こえ方がかなり違う
- めまいなど他の症状も続いている
といった場合は、耳鼻咽喉科で一度確認してもらうことも大切です。
まとめ|耳鳴りを「耳だけ」で考えない
今回お伝えしたポイントは5つです。
- 夜は周囲が静かになることで、耳鳴りが目立ちやすくなる
- 「聞こえる」と「言葉を聞き取れる」は別
- 首やあごを動かすと耳鳴りが変化する人もいる
- 補聴器は単に音を大きくするだけのものではない
- イヤホンよりも「音量 × 時間 × 頻度」が大切
耳鳴りという名前から「耳だけの問題」と考えがちですが、実際には、脳での音の受け取り方、周囲の音、首やあごから入る感覚、自律神経、睡眠や生活環境など、いくつもの要素が耳鳴りの感じ方に関係します。
「何とか耳鳴りを消さないと」と焦るより、自分の場合、どんな時に気になり、どんな時には忘れているのか。
そこを知ることも、耳鳴りと付き合っていくための大切なヒントになるかもしれません。

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参考文献・出典
- NIDCD「Tinnitus」「Sudden Deafness」
- WHO「Deafness and hearing loss: Safe listening」
- NICE「Tinnitus: assessment and management」「Hearing loss in adults: assessment and management」
- 『カラー図解 人体の正常構造と機能[全10巻縮刷版]改訂第5版』:坂井建雄・河原克雅 編集
- 『補聴器ハンドブック 原著第2版』:Harvey Dillon 著/中川雅文 監訳
- 『耳鳴診療ガイドライン 2019年版』:日本聴覚医学会 編
- 『標準耳鼻咽喉科・頭頸部外科学 第5版』:大森孝一・野中学 監修/小島博己・楯谷一郎・近藤健二 編集




