
「まためまいが出たらどうしよう」
「外出先で吐き気がしたらどうしよう」
「電車の中で動悸が始まったら…」
今はそれほど体調が悪くないのに、次に具合が悪くなることばかり考えてしまう。
そんな経験はありませんか?
一度つらい症状を経験すると、その出来事が頭だけでなく身体にも強く残ることがあります。
すると、症状が出ていない時でも、「今日は大丈夫かな?」「また始まるんじゃないかな?」と身体を何度も確認するようになります。
実は、この「また起きたらどうしよう」という不安そのものが、身体を緊張させ、さらに小さな変化を感じやすくすることがあります。
この記事では、不安・パニックや自律神経の不調を25年以上みてきた臨床経験をもとに、「また体調が悪くなったらどうしよう」が頭から離れない理由と、身体からできる対策をわかりやすくお伝えします。
- 一度めまいが出てから、また起こるのが怖い
- 外出先で吐き気や動悸が出ないか心配になる
- 予定の前になると何度も体調を確認してしまう
- 少しふらっとしただけで「また始まった」と不安になる
- 電車やスーパーなど、すぐに帰れない場所が怖い
- 病院で大きな異常がないと言われても安心できない
- 以前は普通にできていたことを避けるようになった
- 体調のことを考えないようにしても、余計に気になってしまう
不安やパニックについて全体から知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
怖くなっているのは「今の症状」ではなく「また起こるかもしれないこと」
「また体調が悪くなったらどうしよう」
この状態では、今まさに強い症状が出ているとは限りません。
むしろ、「まためまいがしたら」「また吐いたら」「また動悸が出たら」という、まだ起こっていない未来の症状に身体が警戒しています。
これが「予期不安」と呼ばれる状態の一つです。

そして大切なのは、予期不安は頭の中だけの問題ではないということです。
不安になると呼吸が浅くなったり、肩に力が入ったり、心拍が速くなったりします。
すると、その身体の変化をまた「体調が悪くなってきた」と感じてしまう。
ここに悪循環ができるのです。
「また起きたらどうしよう」は予期不安のひとつ
予期不安とは簡単に言うと、「まだ起きていないことを、先に心配してしまう状態」です。
たとえば以前、電車の中で強い動悸が出たとします。
その日が終わり、身体が落ち着いても、「次に電車へ乗った時も起きるのでは?」という記憶が残ることがあります。
すると次に駅へ向かうだけで緊張する。
ホームに立つと心臓が気になる。
電車に乗ると息苦しさを確認する。
こうして「症状が出てから怖くなる」のではなく、「症状が出る前から怖くなる」状態へ変わっていきます。
これは電車だけではありません。
めまい、吐き気、頭痛、腹痛、動悸、息苦しさなど、過去につらい経験をした症状で起こることがあります。
「また○○」「もし○○」はオレオレ詐欺と同じ
予期不安では、「まためまいが出たら」「もし動悸がしたら」という言葉が頭に浮かびます。
でもこれは、まだ起きていない未来の話です。
私はよくオレオレ詐欺にたとえます。
最初から「これは詐欺の電話だ」と分かっていれば、全部を真に受けませんよね。
予期不安も同じです。「また来たな」「はいはい、予期不安ね」くらいに軽く受け流す。
英語で「もし」は if。
if めまいが出たら
if 吐き気がしたら
まだ事実ではありません。全部を本気で受け取らないことも、大切な対処の一つです。
なぜ一度つらい体調不良を経験すると怖くなるのか?
私たちの脳には、危険だった出来事を覚えて、次に同じことが起きないようにする働きがあります。
熱い鍋に触ってやけどをしたら、次から気をつけますよね。
身体症状についても似ています。
- 強いめまいがして立っていられなかった
- 外食中に強い吐き気が出た
- スーパーで突然息苦しくなった
こうした経験がとても怖かった場合、「また同じことが起こらないように」と脳や身体が警戒することがあります。
流れにすると、
つらい体調不良
↓
「怖かった」という記憶が残る
↓
また起きないか警戒する
↓
身体の変化を探す
↓
小さな違和感にも気づく
となります。
もともとは身体を守るための仕組みなのですが、警戒が強くなりすぎると、普段なら気にならない小さな変化まで「危険かもしれない」と感じることがあります。
身体をチェックするほど不安が大きくなることがあります
予期不安が強い方を25年以上みていると、よく見られるのが「身体の確認」です。
たとえば、
- 脈を何度も測る
- めまいがないか頭を動かして確かめる
- 胃がムカムカしていないか意識する
- 息苦しくないか呼吸を確認する
- 歩きながら「今日はふらついてないかな」と確認する
- 予定の前から何度も体調を考える
どれも「安心したい」からする行動です。
ところが、身体へ注意を向け続けると、普段なら気づかないような感覚まで見つけやすくなります。
身体を確認する
↓
小さな違和感に気づく
↓
「また始まった?」
↓
不安になる
↓
身体が緊張する
↓
動悸・呼吸・胃腸などの変化を感じる
↓
さらに身体を確認する
このループが続くと、「やっぱり私の体はおかしい」と感じやすくなります。
でも実際には、最初の小さな違和感より、その後の「警戒」が大きくなっている場合もあります。
ここに気づけるだけでも、予期不安への見方が少し変わってきます。
不安になると自律神経と身体では何が起こる?
人は不安を感じると、身体もすぐに反応します。
危険に備える方向へ自律神経が働くと、
- 心拍が速くなる
- 呼吸が浅くなる
- 首や肩に力が入る
- 手足が冷たく感じる
- 汗が出る
- 胃腸の働きが変わる
- 身体がふわっとする感じが出る
などが起こることがあります。
ここで問題になるのが、「不安によって起きた身体反応を、また病気のサインだと思ってしまう」ことです。
たとえば緊張して心拍が少し上がっただけなのに、「また動悸が始まった」と感じる。
するとさらに不安になる。心拍がもっと上がる。「ほら、やっぱり悪くなってきた」となります。
不安と身体は、どちらか一方ではなく、お互いに影響し合っています。
だからこそ、頭で「気にしない」と頑張るだけでは難しいこともあるのです。
「症状を出さないようにする」より大切なこと
予期不安が強くなると、「絶対にめまいを起こしたくない」「吐き気を出さないようにしよう」「動悸が出たら困る」と考えます。
もちろん、症状がない方が楽です。
でも「絶対に出してはいけない」と思うほど、自分の身体を確認する回数が増えることがあります。
そこで少し考え方を変えてみます。
「症状を絶対に出さない」ではなく、「少し症状が出ても、自分で落ち着ける」「もし出ても対処できる」という感覚を増やしていくのです。
これはかなり大きな違いです。
症状をゼロにすることだけが安心ではありません。
「出ても大丈夫」という経験が増えることも、身体にとって大きな安心になります。
今からできる3つのセルフケア
身体を確認する回数を少しだけ減らす
いきなり「気にしないようにしよう」とする必要はありません。
それができれば苦労しませんよね。
たとえば身体を確認したくなったら、「さっき確認したから、次は30分後でいい」くらいから始めます。
ゼロにするのではなく、少し間隔を空ける。
それだけでも、身体へ向き続けている注意を少し外へ戻しやすくなります。
足の裏を感じてみる
不安が強い時は、意識が頭や胸、お腹に集まりやすくなります。
そんな時は、足の裏へ意識を移してみてください。
立った状態で、「かかと」「親指の付け根」「小指の付け根」の3か所を床につけます。
そして、「ちゃんと床に立っているな」と感じるだけで十分です。
頭の中で未来を考えるのではなく、「今ここ」に身体の感覚を戻していきます。
肩をぎゅっとすくめて、一気に脱力する
両肩を耳へ近づけるように持ち上げます。
ぎゅーっと3〜5秒ほど力を入れたら、ストン。一気に力を抜きます。2〜3回で十分です。
「リラックスしないと」と頑張るより、「力が入っている状態」と「抜けた状態」を身体に感じてもらう方がわかりやすいことがあります。
25年の臨床で感じる「症状が減っても不安だけ残る」ということ
これまで25年以上、身体の不調や不安を抱えた方をみてきました。
そこでよく感じるのが、「症状の強さ」と「不安の強さ」は、必ずしも同じではないということです。
最初は強いめまいや動悸があった。
その後、身体は少しずつ楽になってきた。
それでも、「また起きたらどうしよう」という怖さだけが残っていることがあります。
本人からすると、「前より良くなっているのに、なぜまだ怖いの?」と思います。
でも身体からすると、一度かなり怖い思いをしています。
だから私は、今出ている症状だけでなく、「何が一番怖いですか?」「どんな時に身体を確認していますか?」「症状が出る前に、どんなことを考えていますか?」という部分も大切にしています。
身体が楽になることと、「もう少し動いても大丈夫」と感じられること。
この両方が少しずつ重なることで、生活の範囲も広がりやすくなります。
医療機関で確認した方がよい場合
めまい、動悸、頭痛、吐き気などは、不安や自律神経だけで起こるものではありません。
突然の強い胸痛、失神、片側の手足の麻痺や力が入らない、ろれつが回らない、今まで経験したことのない激しい頭痛などがある場合は、まず医療機関での確認を優先してください。
原因を確認したうえで、身体の緊張や不安が残っている場合に、身体から整えていくという考え方もあります。
おおくま整骨院でできること
当院では「不安だけ」「自律神経だけ」と一つに決めつけず、身体全体をみていきます。
- 首や肩、背中、胸郭の緊張
- 呼吸の深さ
- 睡眠
- 胃腸の状態
- 食事や栄養
- 生活リズム
そして、「どんな時に不安になるのか」という心理的な背景も確認します。
身体がガチガチに緊張したまま、「不安にならないようにしよう」と頑張っても難しいことがあります。
だから当院では、オステオパシーややさしい身体調整などを使いながら、まず身体から緊張を減らしていきます。
身体が少しゆるむ。
呼吸がしやすくなる。
身体のことを考えない時間が少し増える。
そこから、「外へ出ても大丈夫だった」「電車に少し乗れた」「今日は体調を確認するのを忘れていた」という小さな経験を積み重ねていきます。
「また悪くなったらどうしよう」から、「もし少し調子が悪くなっても対処できる」へ。
この変化を一緒につくっていくことを大切にしています。
よくある質問
- Q予期不安があるとパニック障害なのでしょうか?
- A
予期不安があるからといって、必ずパニック障害というわけではありません。めまい、吐き気、動悸など一度つらい経験をしたあとに「また起きたら」と不安になることはあります。症状の頻度や生活への影響も含めて考えることが大切です。
- Q症状が出ていない時まで不安になるのはなぜですか?
- A
以前のつらい経験を身体が覚えていると、「また起こるかもしれない」と先回りして警戒することがあります。その結果、まだ症状がない時から脈や呼吸、胃の状態などを確認し、小さな変化にも敏感になってしまうことがあります。
- Q体調を気にしないようにした方がいいのでしょうか?
- A
無理に「気にしない」と思うほど、逆に気になることがあります。大切なのはゼロにしようとすることではなく、確認する回数を少し減らしたり、足裏や周囲の景色など別の感覚へ注意を移したりすることです。
- Q怖くても無理に外出した方がいいですか?
- A
いきなり怖い場所へ行く必要はありません。「家の前まで」「近所を5分」「空いている時間に買い物」など、自分が少し安心できる範囲から始める方法があります。できた経験を積み重ねることが、自信につながることがあります。
- Qおおくま整骨院ではどのようなことをしますか?
- A
身体の緊張、呼吸、睡眠、生活習慣、栄養、心理的な負担などを確認しながら、やさしい身体調整を行います。「不安を無理に消す」のではなく、身体が安心を感じやすい状態をつくり、できることを少しずつ増やしていくことを大切にしています。
まとめ
「また体調が悪くなったらどうしよう」そう考えてしまう時、身体はまだ起きていない症状に備えて、ずっと警戒しているのかもしれません。
一度つらい体験をすると、「また起きないように」と身体を確認したくなるのは自然な反応です。
ただ、その確認が増えすぎると、小さな違和感にも気づきやすくなり、不安と身体の緊張がぐるぐる回り始めることがあります。
大切なのは、「絶対に症状を出さない」ことだけではありません。
「もし少し出ても大丈夫」「自分で対処できる」という安心を、身体と一緒に少しずつ増やしていくことです。

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参考文献
- 『不安症および関連症群 面接マニュアル』:David H. Barlowほか
- 『不安とパニックの認知行動療法』:David M. Clarkほか
- 『身体はトラウマを記録する』:ベッセル・ヴァン・デア・コーク
- 『自律神経の科学』:鈴木郁子



