
「この日に予約します」
そう決めたはずなのに、しばらくすると、「やっぱり別の日にしてください」
そして変更したあとにも、「やっぱり最初の日の方がよかったかな……」
こんなふうに、何度も予定を変更してしまう。
本人も、「どうして私は一度で決められないんだろう」「相手にも迷惑をかけているよね」と気にしていることがあります。
でも、こうした行動は単なる「優柔不断」だけでは説明できないことがあります。
実は、「決めること」が苦手なのではなく、「決めたあとに不安になる」という心理が関係していることがあります。
- 一度予定を決めても「本当にこれでいいかな?」と何度も考え直してしまう方
- 予約したあとに不安になり、変更やキャンセルを繰り返してしまう方
- 「相手に迷惑だったかな」「どう思われたかな」と人の反応を気にしすぎてしまう方
- HSP傾向があり、周囲の雰囲気や人の表情・言葉を深く受け取りやすい方
- 不安やパニックになりやすく、体調の変化まで気になって予定を決めにくい方
本当に苦手なのは「決めること」ではない
こういう方を見ていると、最初の決断は意外と普通にできます。
「水曜日の10時にします」
ここまでは問題ありません。
ところが予約を取ったあとから、
「水曜日で本当に大丈夫かな?」
「朝から体調が悪かったらどうしよう」
「仕事が入るかもしれない」
「もっといい時間があったんじゃないかな」
「先生はこの時間で迷惑じゃなかったかな」
と、いろいろな可能性を考え始めます。
つまり、決断できないというより、決断した状態のまま過ごすことが苦手なのかもしれません。
心理学には「不確実さへの耐性」という考え方があります。
未来のことは誰にも分かりません。
「本当に大丈夫かな?」「100%間違いないかな?」
その答えが分からない状態を、とても不快に感じる人がいます。
すると、一度決めたことを何度も考え直したくなるのです。
「変更すると安心する」がクセを強くする
ここがとても大切です。
たとえば、
土曜日の10時に予約する
↓
「本当に土曜日で大丈夫かな?」
↓
不安になる
↓
火曜日に変更する
↓
ホッとする
この「ホッとする」がポイントです。
何度も予定を変えたくなる人の中では、こんな流れが起きていることがあります。

脳からすると、「予定を変更したら不安が下がった」という経験になります。
すると次に不安になったときにも、「変更した方が安心できる」と考えやすくなります。
ところが火曜日が近づいてくると、「火曜日で本当にいいのかな?」と、また不安になる。
つまり問題は、土曜日か火曜日かではありません。
不安になるたびに予定を変更することで、安心しようとしていることにあります。
変更すれば、その瞬間は楽になります。
しかし、「不安だったけど、そのままでも大丈夫だった」という経験をする機会が少なくなります。
これは、不安になるたびに何度も確認して一時的に安心する行動とも、一部似ています。
ですから、「また予定を変えている」という行動だけを見るのではなく、「何が不安になって、変更したくなったんだろう?」と考えてみることが大切です。
人の目が気になる人は、さらに迷いやすくなる
もう一つ多いのが、自分がどうしたいかより、「相手がどう思うか」を考えすぎるタイプです。
たとえば予約したあとに、
「10時って忙しい時間だったかな?」
「先生は本当は11時の方がよかったんじゃないかな?」
「こんなことでLINEしたら面倒な人だと思われないかな」
「変更したら嫌われるかな」
と考えます。
ここで特徴的なのは、
まだ相手から何も言われていないのに、相手の気持ちを頭の中で先回りしているということです。
しかも、「迷惑だったらどうしよう」「嫌われたらどうしよう」という悪い可能性を大きく考えてしまいます。
自分の予定を決めているはずなのに、いつの間にか、「私はどうしたい?」ではなく、「相手はどう思う?」を基準に予定を決めるようになります。
そうすると、決断はどうしても不安定になります。
HSP傾向のある人にも起こることがあります
HSPは医学的な診断名ではありません。
心理学では、これに近いものとして「感覚処理感受性」という特性が研究されています。
感受性の高い人では、
- 周囲の変化に気づきやすい
- 人の表情や声のトーンをよく感じ取る
- 物事を深く考える
- 刺激が多いと疲れやすい
といった傾向があります。
すると、
- LINEの返信が少し遅い
- 声のトーンがいつもと違った
- 表情が少し気になった
そんな小さなことから、「何か悪かったかな?」「迷惑だったかな?」と考えることがあります。
もちろん、「HSPだから予約変更が多い」という単純な話ではありません。
ただ、
- 感受性が高い
- 人の評価を気にしやすい
- 不確実なことが苦手
- 不安を感じやすい
こうした特徴が重なると、一度決めたことを何度も考え直したくなることはあるでしょう。
「これ、私かもしれない」と思う方もいるかもしれません。
「一番いい答え」を探しすぎていませんか?
不安の強い人では、「正解を選ばないといけない」という考えが強くなることがあります。
AとBがあったとき、「まあAでいいか」ではなく、「本当にAでいい?」「Bの方が正解じゃない?」「あとで後悔しない?」と考え続けます。
つまり、「十分よい答え」ではなく、「絶対に間違わない答え」を探してしまいます。
でも未来の予定に、100%の正解はほとんどありません。
- 体調が変わるかもしれない
- 仕事が入るかもしれない
- 天気が変わるかもしれない
未来は決めきれないからこそ、正解を探せば探すほど迷いやすくなります。
不安やパニックとも共通するところがあります
こうした考え方は、不安やパニックになりやすい人にもみられることがあります。
もちろん、「予約変更が多い人はパニック障害になる」という意味ではありません。
共通する部分の一つが、「まだ起きていないことを危険かもしれないと考える」ということです。
たとえば、「その日、体調が悪かったらどうしよう」と考えているときに、
- 少し胃が重い
- 心臓がドキドキした
- 頭がフワッとした
と感じる。
すると、「やっぱりこの日は無理かもしれない」と感じて予定を変更する。
このように、まだ起きていない未来の不安と、今感じている体の感覚が結びつくことがあります。
心拍、呼吸、胃腸の動きなど、体の中の感覚を感じ取る働きを「内受容感覚」といいます。
不安が強い人では、こうした身体感覚に注意が向きやすくなることも研究されています。
だから単純に、「考えすぎ」と片づけるだけでは十分ではないのです。
心理だけではなく「体の状態」も見てみる
ここは当院で大切にしているところです。
「栄養不足、低血糖だから予約を変更する」という話ではありません。
予約を何度も変更するという行動には、心理、これまでの経験、性格傾向、生活環境など、いろいろな要因が関係します。
ただ、体調が不安定なときには、不安を強く感じやすくなることがあります。
たとえば、
- 食事を抜くことが多い
- 食べる量が少ない
- 睡眠不足が続いている
- 疲労がたまっている
- カフェインを多く摂っている
こうした状態では、体調そのものが安定しにくくなります。
また、実際に血糖が低下したときには、
- 動悸
- 手の震え
- 発汗
- 空腹感
- ソワソワする
- 集中しにくい
といった症状が出ることがあります。
こうした身体感覚は、不安やパニックのときの感覚と似ています。
そのため身体感覚に敏感な人では、
「なんかドキドキする」
↓
「また体調が悪くなるかも」
↓
さらに緊張する
という流れになることがあります。
もちろん、「しんどい=低血糖」と症状だけで決めつけることはできません。
大切なのは、
心の問題だけ
体の問題だけ
と分けて考えすぎないことです。
食事、睡眠、疲労、体重変化、胃腸の状態なども一緒に見ていくと、自分の不安が強くなる条件が見えてくることがあります。
では、どうしたらいいのでしょう?
まず、「絶対に予定を変更してはいけない」と考える必要はありません。
本当に都合が悪くなれば、予定を変更すればいいのです。
ただ、変更したくなったときに一度だけ、「本当にこの日が無理になったのかな?」
それとも、「不安になったから変えたくなったのかな?」と分けて考えてみてください。
もし、「なんとなく不安」「本当にこの日でいいのか気になる」くらいなら、すぐに変更せず、少しそのままにしてみます。
不安が出ても、「今、不安になっているだけかもしれない」と一度置いてみる。
これは、不確実な状態のまま少し過ごしてみる練習になります。
不確実さを扱う認知行動療法などでも、こうした考え方が使われています。
100点ではなく「70点」で決めてみる
このタイプの人には、「絶対に正しい選択をする」より、「今ある情報なら、これで十分」という考え方が大切です。
予定は未来のことです。
未来の自分の体調まで、今日決めることはできません。
「今のところ水曜日で大丈夫」なら、それで十分です。
100点の答えを探し続けるより、70点くらいで一度決めてみる。
そして、「必要になったときに考えればいい」と未来の自分に任せる。
それくらいでもいいのです。
「人にどう思われるか」より「私はどうしたいか」
相手への気遣いができることは、悪いことではありません。
むしろ長所です。
ただ、相手の気持ちを想像しすぎることと、相手を思いやることは少し違います。
「先生はどう思うかな?」「迷惑かな?」ばかりを考えているときには、一度、「私はどうしたい?」と自分に聞いてみてください。
相手の気持ちは、いくら考えても完全には分かりません。
でも、自分がどうしたいかは、自分にしか分かりません。
- Q予約を何度も変更するのは、優柔不断だからですか?
- A
必ずしもそうとは限りません。最初は普通に決められていても、決めたあとに「本当にこれでいいかな」「体調が悪くなったらどうしよう」と不安が強くなり、変更したくなる人もいます。決断力よりも、決めたあとの不確実な状態が苦手なことがあります。
- QHSPだと予定を何度も変更しやすいのでしょうか?
- A
HSPだから予定変更が多くなるとは言えません。ただ、周囲の反応に気づきやすい、人の気持ちを深く考える、不確実なことが気になる、といった特徴に不安が重なると、一度決めた予定を何度も考え直したくなることはあります。
- Q予定を変更すると安心するのはなぜですか?
- A
不安になったときに予定を変更すると、「これで大丈夫」と一時的にホッとすることがあります。そのため、次に不安になったときにも「変更すれば安心できる」と考えやすくなります。予定そのものより、不安を下げるための行動になっていることがあります。
- Q不安になっても予定を変更しない方がいいのでしょうか?
- A
本当に都合が悪くなった場合は変更して構いません。大切なのは「本当に無理になったのか」「不安になったから変えたくなったのか」を一度分けて考えることです。後者なら、すぐ変更せず少し様子を見ることも一つの方法です。
- Q食事や睡眠など体の状態も関係しますか?
- A
直接「栄養不足だから予定を変更する」という意味ではありません。ただ、睡眠不足、疲労、食事不足などで体調が不安定になると、動悸やソワソワ感などが気になり、不安のきっかけになることがあります。心理面と体の状態を一緒に見ることが大切です。
まとめ
何度も予約を変更してしまう背景には、
- 不確実なことが苦手
- 間違えることが怖い
- 人からどう思われるか気になる
- 体の変化に敏感
- 一番いい答えを探してしまう
- 変更すると一時的に安心する
といったことが重なっている場合があります。
そして、
決める
↓
不安になる
↓
考え直す
↓
変更する
↓
安心する
という流れを繰り返しているうちに、「不安になったら変更する」というパターンができていることもあります。
もし読んでいて、「これ、私かもしれない」と思ったら、「また変更してしまった」だけで終わらせず、「私は何が不安になって、変更したくなったんだろう?」と一度考えてみてください。
そこが分かってくると、自分の考え方や体の反応との付き合い方も少しずつ見えてきます。
心だけでもなく、体だけでもない。
自分の心理と体の状態、その両方を知っていくことが大切なのだと思います。




