
「頭が痛いから薬を飲む」これは、ごく普通のことです。
頭痛で仕事も家事もできないのに、「薬は絶対飲まないぞ!」と我慢大会をする必要はありません。
痛み止めは、必要なときに適切に使うためのものです。
ただ、
「前は月に数回だったのに、最近は週に何度も飲んでいる」
「頭痛が来そうだから、早めに飲んでおこうと思う」
「薬を持っていないと不安になる」
「以前より薬が効きにくくなった気がする」
そんな状態になってきたら、一度確認してほしいことがあります。
それが、「薬剤の使用過多による頭痛」です。
頭痛を楽にするために飲んでいる薬なのに、飲む日が増えることで、かえって頭痛が続きやすくなることがあります。
なんともややこしい話です。
「助けてもらっていたはずなのに、いつの間にか話が変わってるやん」という感じですよね。
この記事では、
- 薬剤の使用過多による頭痛とは何か
- どのくらい薬を飲むと注意が必要なのか
- 市販の頭痛薬でも起こるのか
- なぜ頭痛薬を飲む日が増えてしまうのか
- 頭痛薬は我慢した方がいいのか
- 頭痛日記の使い方
- 当院ではどのように考えているのか
について、できるだけ分かりやすくお話しします。
- 頭痛薬を飲む日が増えてきた
- 週に何度も頭痛薬を飲んでいる
- 薬を飲んでもまた頭痛が出る
- 薬がないと不安になる
- 片頭痛を繰り返している
- 緊張型頭痛が慢性化している
- 市販の鎮痛薬をよく使っている
- 朝から頭痛がある日が増えた
- ほぼ毎日のように頭が重い
- 以前より頭痛が治りにくくなった気がする
「薬剤の使用過多による頭痛」とは?
以前から片頭痛や緊張型頭痛などの頭痛がある方が、頭痛を抑えるための薬を頻繁に使用するようになり、頭痛そのものが増えてしまうことがあります。
これを、「薬剤の使用過多による頭痛」といいます。
英語ではMedication-overuse headache、略してMOHと呼ばれます。
以前は「薬物乱用頭痛」という名前も使われていました。
でも「薬物乱用」というと、「危ない薬でも使っているの?」という印象がありますよね。
もちろん、そういう意味ではありません。
普通に薬局で購入できる頭痛薬や、医療機関から処方された片頭痛治療薬などでも、使用する日数が増えることで起こる可能性があります。
ですから、「薬を乱用している人の病気」という見方をしないことが大切です。
頭痛がつらい
↓
だから薬を飲む
↓
また痛くなる
↓
だからまた飲む
その繰り返しの中で、いつの間にか薬を使う日が増えていることがあるのです。
どのくらい薬を飲んだら注意が必要?
ここはとても大切です。「何錠飲んだか」だけではなく、「1か月のうち何日使ったか」を確認します。
薬剤の使用過多による頭痛では、もともと頭痛がある方に、
- 月15日以上の頭痛がある
- 頭痛の急性期治療薬を3か月を超えて定期的に使用している
といったことが診断基準に含まれます。
ただし、注意する使用日数は薬の種類によって違います。
月10日以上が目安になる薬
- トリプタン
- エルゴタミン製剤
- オピオイド
- 複合鎮痛薬
- 複数の種類の頭痛薬を組み合わせて使用している場合
などでは、月10日以上の使用が3か月を超える場合が基準になります。
月15日以上が目安になる薬
- アセトアミノフェン
- NSAIDsなどの非オピオイド系鎮痛薬
では、月15日以上の使用が3か月を超える場合が基準になります。
ここで大切なのは、「10錠」ではなく、「10日」ということです。
朝と夜に2回飲んでも、その日は「1日」と数えます。
逆に、1日1錠でも月15日使っていれば「15日」です。
市販の頭痛薬でも起こるの?
起こることがあります。
日本頭痛学会でも、薬剤の使用過多による頭痛では、市販されている複合鎮痛薬の使用に注意するよう説明されています。
市販薬は、「病院へ行かなくても買える」「いつもの薬だから安心」「薬局ですぐ買える」という便利さがあります。
これは大きなメリットです。
ただ、便利だからこそ、「あれ?今月何日飲んだっけ?」となりやすいんです。
お財布のレシートは残っているのに、薬を飲んだ日は覚えていない。
人間、そんなものです(笑)
だからこそ、薬の名前と飲んだ日を簡単に記録しておくことが大切です。
なぜ頭痛薬を飲む日が増えてしまうの?
これには、いろいろな理由があります。
頭痛そのものが増えている
もともと月に2〜3回だった片頭痛が、仕事の忙しさ、睡眠不足、生理周期、ストレスなどで増えることがあります。
頭痛が増えれば、当然薬を使う日も増えます。
ですから、「薬を飲みすぎたから全部悪くなった」と単純に考えるのではなく、「そもそも、なぜ頭痛が増えたのか?」を見ることも大切です。
「また痛くなったらどうしよう」という不安
強い片頭痛を何度も経験していると、「あの痛みはもう嫌だ」と思います。
当然です。
そこで、「少し頭が重い気がする」「今日忙しいから、念のため飲んでおこう」となることがあります。
薬を持っていることで安心する。
これは悪いことではありません。
ただ、頭痛がない日まで予防的に急性期の薬を使うことが増えている場合は、一度医師に相談してみる価値があります。
薬が効きにくくなったように感じる
以前は1回飲めば落ち着いていた。
でも最近は、「またすぐ痛くなる」「もう一回飲まないといけない」という方もおられます。
そうすると、
頭痛
↓
薬
↓
また頭痛
↓
また薬
という流れになってしまいます。
薬剤の使用過多による頭痛では、この悪循環から抜けることが治療の大切なポイントになります。
頭痛薬は飲まない方がいいの?
いいえ。
この記事で一番誤解してほしくないところです。
「頭痛薬は悪い」という話ではありません。
片頭痛などでは、適切なタイミングで急性期治療薬を使うことが大切です。
痛みを我慢し続けて、「薬を飲まなかった自分、えらい!」という競技ではありません(笑)
必要な薬は使います。
ただ、「最近使う日が増えているな」と気づいたら、その理由を一度確認する。
これが大切です。
自分で急に薬をやめてもいいの?
薬剤の使用過多による頭痛が疑われる場合、原因となっている急性期治療薬の中止や使用方法の見直しが治療の中心になります。
ただし、使用している薬の種類や頭痛の状態によって対応が異なります。
自己判断で突然薬を全部やめるのではなく、頭痛専門医やかかりつけ医へ相談してください。
治療では、必要に応じて頭痛の予防薬を使ったり、頭痛が強い場合には医療機関で経過をみながら治療することもあります。
「じゃあ明日から全部ゼロ!」と勢いだけで始める必要はありません。
まず、「何を、月に何日使っているのか」ここからです。
「何錠」より「何日」を記録する
おすすめなのが頭痛日記です。
難しいものではありません。
カレンダーでも構いません。
頭痛があった日に○。
薬を飲んだ日に「薬」と書く。
これだけでもかなり違います。
例えば、
1日 頭痛・薬
2日 なし
3日 なし
4日 頭痛・薬
5日 頭痛・薬
という感じです。
できれば、
- 頭痛があった日
- 頭痛の強さ
- ズキズキか、締めつける感じか
- 吐き気
- 光や音がつらいか
- 薬の名前
- 薬を飲んだ日
- 生理周期
- 睡眠時間
なども少し記録しておくと、さらに分かりやすくなります。
「薬が悪い」のではなく、元の頭痛を見ることが大切
薬剤の使用過多による頭痛がある方の多くは、その前から頭痛を持っています。
特に多いのが、
- 片頭痛
- 緊張型頭痛
などです。
つまり、薬だけを見るのではなく、「そもそも、なぜこれだけ頭痛の日が増えたのか」も確認する必要があります。
片頭痛が月に何度も起きる。
- 緊張型頭痛が慢性化している
- 睡眠が足りていない
- 仕事のストレスが強い
- 生理前後に頭痛が集中する
- 首肩の緊張がずっと強い
- 食いしばりがある
こうした背景が重なっていることもあります。
【片頭痛の記事】
【緊張型頭痛の記事】
「朝から頭が痛い」「毎日重い」という方も
薬剤の使用過多による頭痛では、もともとの片頭痛や緊張型頭痛とは違った痛み方になってくる場合があります。
以前は、「月に数回ズキズキするだけ」だったのに、最近は、「毎日のように頭が重い」「朝から頭痛がある」「ズキズキの日もあれば、締めつける日もある」というように変わってきた。
そんな場合は、頭痛の種類だけでなく、薬の使用日数も一緒に確認してみてください。
頭痛薬を減らしたいのに怖い
「薬を使う日を減らした方がいいのは分かっているんです」「でも痛くなるのが怖いんです」
こういう方もおられます。これは当然だと思います。
強い頭痛を何度も経験していれば、「薬がないと怖い」と思うのは不思議ではありません。
大切なのは、「薬に頼っている自分はダメ」と責めないことです。
頭痛を何とかしようとしてきた結果です。
だからこそ、薬を取り上げるように考えるのではなく、「どうしたら頭痛そのものを減らせるのか」「どんな治療が必要なのか」を医療機関と一緒に考えていくことが大切です。
当院ではどう考えているの?
薬剤の使用過多による頭痛そのものの診断や、薬の中止・変更は医療機関で行うものです。
当院で、「この薬をやめてください」「この薬を減らしてください」という指示はしません。
一方で、頭痛が増えている方の中には、
- 首肩がずっと緊張している
- 食いしばりが強い
- 睡眠が浅い
- 生活リズムが乱れている
- 運動量が少ない
- 仕事や家庭のストレスが強い
- 食事が抜けることが多い
などが重なっていることがあります。
当院では、「薬を減らすこと」を目的にするのではなく、「なぜ頭痛を繰り返しているのか」という視点から、その方の体や生活の状態を確認します。
首や肩を揉めば薬を減らせるわけではありません
ここも大切です。
頭痛薬を飲む日が増えているからといって、「首をほぐしたら薬がいらなくなる」という単純なものではありません。
特に片頭痛では、首肩こりを伴うこともありますが、片頭痛そのものは首こりだけで説明できるものではありません。
当院では、
- 首や肩
- 後頭部
- 顎や食いしばり
- 胸や背中
- 呼吸
- 睡眠
- 生活習慣
などを、その方に合わせて確認します。
施術では強く揉んだりボキボキしたりするのではなく、揺らしやSCS、オステオパシーなどの考え方を取り入れながら、体の状態を見ていきます。
頭痛が増えてきたときに確認してほしい5つ
① 1か月に何日頭痛がある?
何回ではなく「何日」かを数えてみてください。
② 1か月に何日薬を使っている?
薬の種類と使用日数を記録します。
③ 頭痛の痛み方が変わっていない?
以前はズキズキだけだったのに、毎日頭が重くなっていないか。
逆に、いつもの頭痛と明らかに違う痛みが出ていないか確認します。
④ 睡眠や生活が崩れていない?
最近寝不足が続いていないか。
仕事が忙しくなっていないか。
食事を抜くことが増えていないか。
頭痛が増え始めた時期と重ねて考えてみてください。
⑤ 「念のため」の薬が増えていない?
頭痛が出ていないのに、「今日は忙しいから飲んでおこう」という日が増えていないかも確認してみてください。
気づくだけでも大きな一歩です。
こんな頭痛は薬の飲みすぎと思い込まないでください
頭痛薬を頻繁に使っている方でも、すべての頭痛が薬剤の使用過多による頭痛とは限りません。
特に、
- 突然起こった激しい頭痛
- これまで経験したことがない強い頭痛
- 急速に悪化している
- 手足に力が入りにくい
- ろれつが回らない
- 意識がぼんやりする
- 高熱を伴う
- 繰り返し嘔吐する
- 頭を打ったあとから痛みが強い
などがある場合は、「薬を飲みすぎたせいやろ」と自己判断せず、医療機関で確認してください。
よくある質問
- Q頭痛薬を月10日飲んだら薬剤の使用過多による頭痛ですか?
- A
月10日使っただけで、すぐに診断されるわけではありません。
薬剤の使用過多による頭痛では、頭痛の日数、使用している薬の種類、使用期間などを合わせて判断します。
薬によって月10日以上が基準になるものと、月15日以上が基準になるものがあります。
心配な場合は、薬の名前と飲んだ日を記録して医療機関へ相談してください。
- Q整体を受ければ頭痛薬をやめられますか?
- A
整体で薬を中止させることはできません。
薬の変更や中止は医師と相談して決めるものです。
当院では、首肩の緊張、食いしばり、睡眠、体の使い方、生活習慣など、頭痛と一緒に抱えている問題を確認しながらサポートしています。
- Q市販のロキソニンなどでも注意した方がいいですか?
- A
NSAIDsなどの非オピオイド系鎮痛薬についても、使用日数が多い状態が続くと薬剤の使用過多による頭痛の対象になることがあります。
市販薬だから問題ない、処方薬だから問題がある、という分け方ではありません。
使用日数を確認することが大切です。
- Q頭痛薬をやめればすぐ治りますか?
- A
薬剤の使用過多による頭痛では、原因となっている薬の使用を見直すことで改善する方が多いとされています。
ただし、元々の片頭痛や緊張型頭痛がなくなるとは限りません。
予防治療などが必要になる方もいますので、医療機関と相談しながら進めることが大切です。
- Q薬を飲んだら頭痛が悪化するのですか?
- A
適切に使用している頭痛薬そのものを怖がる必要はありません。
問題になるのは、急性期の頭痛薬を頻繁に使用する状態が長期間続いている場合です。
必要な治療まで我慢する必要はありません。
まとめ|薬を責めるのではなく「飲む日が増えた理由」を見る
頭痛薬は悪者ではありません。
つらい頭痛を助けてくれる、大切な治療のひとつです。
ただ、「以前より飲む日が増えた」という変化は、体からのひとつのサインかもしれません。
そのときに、「薬を飲んでいる自分がダメなんだ」ではなく、「最近、なんでこんなに頭痛が増えてるんやろ?」と考えてみてください。
- 片頭痛が増えたのか
- 睡眠不足なのか
- ストレスなのか
- 生理周期なのか
- 首肩の緊張なのか
- 食いしばりなのか
- そして、薬を月に何日使っているのか
まずそこを整理することです。
頭痛の日と薬を飲んだ日を記録する。必要なら頭痛専門医へ相談する。
そのうえで、自分で整えられる生活や体の状態も見直していく。
薬を我慢することより、「頭痛そのものを減らすにはどうしたらいいか」を考える方が大切です。
東大阪・若江岩田周辺で、頭痛を繰り返し、首肩こり、食いしばり、睡眠、体の緊張なども気になっている方はご相談ください。
医療機関での治療と役割を分けながら、その方の体や生活の状態を一緒に確認していきます。

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参考文献
- 『頭痛の診療ガイドライン2021』:日本頭痛学会・日本神経学会・日本神経治療学会 監修
- 『国際頭痛分類 第3版(ICHD-3)日本語版』:日本頭痛学会・国際頭痛分類委員会
- 『頭痛の診かた』:寺本純
- 『頭痛女子のトリセツ』:清水俊彦
- 『頭痛は消える。』:清水俊彦




