
「膝の内側が痛くて歩けない」
「長時間しゃがんで作業をしたあとから、膝が痛くなった」
「正座や立ち上がる動作がつらい」
このような膝の痛みで悩んでいませんか?
今回は、お墓の掃除で約2時間しゃがんで草引きをしたあと、立ち上がった瞬間に左膝の内側へ激痛が走り、歩くことも難しくなった70代女性の症例をご紹介します。
転倒したわけでも、膝をぶつけたわけでもありません。それまで普通に歩いていたのに、長時間しゃがんだあと突然強い痛みが出ました。
病院では鵞足炎について説明を受け、湿布や痛み止め、注射などの処置を受けられましたが、まだ歩きづらさが残っていたため当院へ来院されました。
膝の内側には鵞足だけでなく、半月板や靱帯などいくつもの組織があります。そのため「膝の内側が痛いから鵞足炎」と症状だけで決めることはできません。
当院では痛い膝だけを見るのではなく、膝の曲げ伸ばし、股関節や足首の動き、歩き方、太ももの筋肉の緊張なども確認しながら施術を進めていきました。
同じような膝の内側の痛みで困っている方は、ぜひ参考にしてください。
- 膝の内側が痛い
- 立ち上がる時に膝が痛い
- しゃがんだあとから膝が痛くなった
- 正座や階段の上り下りがつらい
- 病院で鵞足炎や変形性膝関節症と言われた
- 湿布や薬を使っているが、まだ歩きにくい
お墓の草引きを2時間。そのあと左膝に激痛が走りました
来院されたのは70代の女性です。お墓参りに行かれた際、お墓の周りにかなり雑草が生えていたそうです。とてもきれい好きな方ですので、「せっかく来たのだから全部きれいにして帰ろう」と草引きを始められました。
作業時間は約2時間。途中でほとんど休憩を取らず、しゃがんだ姿勢を続けていたそうです。そして草引きが終わり、立ち上がろうとしたその瞬間、左膝の内側に強い痛みが走りました。
「急にものすごく痛くなって、立つこともできなかった」と話されていました。
転倒したわけではありませんが痛みは非常に強く、歩くことも難しい状態でした。
救急車を呼ぼうか迷われたそうですが、ご家族に迎えに来てもらい、肩を借りながら自宅へ戻られました。その夜も痛みが強く、ほとんど眠れなかったそうです。
翌日も立ち上がるのがつらく、膝には腫れもありました
翌朝になっても痛みは強く残っていました。
立ち上がることも歩くことも難しく、何かにつかまらなければ移動しづらい状態でした。反対側の膝と比べても腫れているように感じ、熱っぽさもあったそうです。
2日ほど安静にすることで、痛みを10とすると8くらいまでには落ち着いてきましたが、まだ普通に歩ける状態ではありませんでした。
今回のように、体重をかけられないほど痛い、急に大きく腫れた、赤みや強い熱感がある、膝をほとんど曲げ伸ばしできないといった場合は、整体だけで様子を見るのではなく、まず整形外科などの医療機関で確認してもらうことが大切です。
膝の内側が痛くなる原因は鵞足炎だけではなく、半月板や靱帯、骨、関節などの問題でも起こるからです。
鵞足炎とは?なぜ膝の内側が痛くなるのでしょうか

膝の内側には、「鵞足」と呼ばれる部分があります。
鵞足という名前の筋肉があるわけではありません。
縫工筋、薄筋、半腱様筋という3つの筋肉の腱が、すねの骨である脛骨の内側へ集まって付着しています。その形がガチョウの足に似ていることから「鵞足」と呼ばれています。
- 縫工筋
- 薄筋
- 半腱様筋
この鵞足周辺には、筋肉の腱と骨との摩擦を少なくする滑液包と呼ばれる組織もあります。
スポーツなどによる繰り返しの動作や膝への負担によって、この周辺に炎症や刺激が起こり、膝の内側に痛みが出ることがあります。
ランニングなどのスポーツをしている方だけに起こるものではありません。中高年の方や変形性膝関節症がある方などにも鵞足部の痛みがみられることがあります。
ただし、膝の内側には半月板や内側側副靱帯などもあります。
「膝の内側が痛い」「立ち上がる時に痛い」「階段で痛い」という症状だけで鵞足炎かどうかを判断することはできません。
痛みが強い場合や腫れが続いている場合には、まず医療機関で膝の状態を確認してもらってください。
なぜ草引きのあとに膝が痛くなったのでしょうか
この方の場合、特徴的だったのは「約2時間、ほとんど休まずしゃがんでいた」ということです。
草引きは、意外に膝へ負担がかかります。
深く膝を曲げた姿勢を長時間続け、その状態から何度も体を動かします。さらに作業が終わって立ち上がる時には、膝だけでなく太ももや股関節周囲の筋肉を使いながら体重を支えなければなりません。
もちろん、今回の症例だけを見て「2時間しゃがんだから鵞足炎になった」と断定することはできません。
ただ、普段あまり行わない姿勢を長時間続けたことが、膝周囲への負担を大きくする一つのきっかけになった可能性は考えられます。
草引きやガーデニング、大掃除などでは、つい夢中になってしまいます。
「あと少しだから」「ここまでやってしまおう」と思っているうちに、1時間、2時間と同じ姿勢を続けてしまうことがあります。
膝に不安がある方は、途中で立ち上がって姿勢を変えたり、こまめに休憩したりすることも大切です。
病院を受診したあと当院へ来られました
この方は医療機関を受診され、湿布や痛み止め、注射などの処置を受けたあと、当院へ来られました。
初回来院時には、まだ左膝をかばいながら歩いておられました。
膝に強い痛みがあると、人は無意識に痛い側へ体重をかけないように歩きます。
すると膝だけではなく、太ももや股関節、反対側の脚、腰まわりなどにも普段とは違った力が入ってきます。
実際にこの方も、膝周辺だけではなく太ももや股関節周囲に強い緊張がみられました。
膝の内側では、鵞足に関係する筋肉や腱の周辺にも痛みがありました。
膝だけを見るのではなく、股関節や足首、歩き方まで確認しました
膝が痛いからといって、当院では膝だけを強く揉んだり、痛いところを無理に押したりすることはありません。
膝は股関節と足首の間にある関節です。
歩く時には膝だけが動いているわけではなく、股関節や足首も連動しています。そのため膝に痛みがある方では、膝だけでなく周囲の関節や筋肉、歩き方まで確認することがあります。
この方の場合も、膝の曲げ伸ばしだけではなく、股関節や足首の動き、太ももや股関節周囲の緊張、立ち上がり方、歩く時の体重のかけ方などを確認しました。
特に痛みが強い時には、刺激を強くすればよいわけではありません。
膝に無理な負担をかけないよう注意しながら、その時の状態に合わせて施術を進めました。
少しずつ歩きやすくなり、階段も上り下りできるようになりました
最初は膝をかばいながら歩いておられましたが、施術を重ねる中で少しずつ歩きやすくなっていきました。
日常生活でどのような動作を避けた方がよいのか、逆にどの程度なら動いてよいのかについても、その時の状態を見ながらお伝えしました。
その後は歩く時の不安も減り、最終的には階段の上り下りも問題なくできるようになられました。
ご本人も、「最初はどうなるかと思った」と話されていました。
歩けないほど強い痛みが出れば、「このまま歩けなくなるのではないか」と不安になるのも当然だと思います。
ただし、これは今回の女性の経過です。
同じように膝の内側が痛い場合でも、痛みの原因、年齢、変形性膝関節症の有無、筋力、生活習慣などによって経過は異なります。すべての方が同じように変化するわけではありません。
セルフケア|膝を安定させるパテラセッティング

膝の痛みが少し落ち着いてきた方に、比較的取り入れやすい運動として「パテラセッティング」があります。
パテラセッティングは、太ももの前にある大腿四頭筋を働かせる運動です。膝を大きく曲げ伸ばしせずに行えるため、スクワットなどに比べると膝への負担を抑えながら筋肉を使う練習ができます。
目的は、膝の周りの筋肉を働かせて、膝を安定させやすくすることです。
パテラセッティングのやり方
- 床やベッドの上で、脚を伸ばして座るか仰向けになります
- 膝の裏に、丸めたタオルを入れます。バスタオルを軽く丸めた程度で大丈夫です
- 膝の裏でタオルを床へ押しつぶすように力を入れます
- この時、太ももの前側に「ギュッ」と力が入っていることを確認します
- そのまま5秒ほどキープして、ゆっくり力を抜きます
- これを10回程度繰り返します
ポイントは、足そのものを持ち上げることではありません。
「膝の裏でタオルを押す」という意識で行ってください。
うまくできていると、太ももの前の筋肉が硬くなり、膝のお皿が少し上へ引き上げられるような動きがみられます。
最初から強く力を入れる必要はありません。痛みが出ない程度の力から始めましょう。
痛みが強い時は無理に行わないでください
パテラセッティングは比較的負担の少ない運動ですが、すべての膝痛に適しているわけではありません。
膝が強く腫れている、熱を持っている、体重をかけられないほど痛い、運動をすると痛みが強くなる場合には無理に行わないでください。
今回のような鵞足部の痛みでも、その時の状態によって適した運動は変わります。
「運動はたくさんやればいい」のではなく、痛みを確認しながら少しずつ行うことが大切です。
よくある質問
- Q膝が痛い時にストレッチや筋トレをしてもいいですか?
- A
痛みや腫れが強い時に、無理なストレッチや深いスクワットを行うと痛みが強くなることがあります。まずは痛みが出る動きを控え、原因がわからない場合や強い痛みが続く場合は医療機関で確認してください。痛みが落ち着いてから、その方の状態に合わせて少しずつ運動を行うことが大切です。
- Q膝が痛い時は正座をしない方がいいですか?
- A
私は膝の構造を考えると、特に膝に痛みがある方には正座をおすすめしていません。
専門学校時代にも、正座は膝を非常に深く曲げる姿勢であり、海外では避けるよう指導することがあると教わりました。
実際、正座では膝を145度以上まで曲げることもあり、膝関節にとってはかなり深い屈曲になります。深く曲げるほど膝関節や半月板などにかかる力も変化します。
そのため私は、膝に痛みや腫れがある方、変形性膝関節症がある方には、無理に正座を続けないようお伝えしています。
床に座る生活が多い方であれば、椅子や高さのあるクッションを使うなど、できるだけ膝を深く曲げ続けない工夫をおすすめしています。
- Q膝が痛いのに、なぜ股関節や足首も確認するのですか?
- A
歩く、立つ、階段を上るといった動作では、膝だけでなく股関節や足首も一緒に動きます。股関節や足首の動きが悪かったり、膝をかばった歩き方が続いたりすると、膝や反対側の脚、腰などに負担が集中することがあります。
そのため当院では「膝が痛いから膝だけを見る」のではなく、股関節や足首の動き、筋肉の緊張、立ち方や歩き方なども一緒に確認しています。
まとめ|長時間しゃがんだあとの膝の内側痛には注意してください
今回は、お墓の草引きを約2時間続けたあと、立ち上がった瞬間に左膝の内側へ激痛が走った70代女性の症例をご紹介しました。
鵞足は、縫工筋・薄筋・半腱様筋という3つの筋肉の腱が集まる膝の内側の部分です。スポーツだけではなく、膝への負担が繰り返されることで、この周辺に痛みが出ることがあります。
ただし、膝の内側の痛みは鵞足炎だけで起こるわけではありません。半月板や靱帯、変形性膝関節症などでも似た場所に痛みが出るため、強い痛みや腫れがある場合は自己判断せず医療機関で確認してもらうことが大切です。
今回の症例から特にお伝えしたいのは、「同じ姿勢を長時間続けない」ということです。
草引き、ガーデニング、掃除などに集中すると、気づかないうちに膝を深く曲げた姿勢を長く続けてしまいます。時々立ち上がる、姿勢を変える、休憩を入れるだけでも膝への負担を減らすことにつながります。
「病院で大きな問題はないと言われたけれど、まだ膝の内側が痛い」
「痛みをかばって歩いているうちに、太ももや腰までつらくなってきた」
「以前のように歩いたり階段を上ったりしたい」
このようなことでお困りでしたら、一度ご相談ください。
当院では膝だけを見るのではなく、股関節や足首、歩き方、周囲の筋肉の状態なども確認しながら、その方に合わせてできるだけ負担の少ない施術を行っています。
医療機関での検査や治療が必要だと考えられる場合には、無理に整体で対応せず、病院での確認をおすすめしています。

参考文献・参考情報
- 日本整形外科学会「膝の症状・疾患」
- 日本整形外科学会「変形性膝関節症」
- Mohseni M, Mabrouk A, Li D. Pes Anserine Bursitis. StatPearls Publishing
- Cleveland Clinic「Pes Anserine Bursitis」




