

急に運動をしたら筋肉痛になりました。
痛いので湿布を貼りましたが変化がありませんでした。
何か間違っているのでしょうか?
早く痛みが取れるには、どうしたら良いですか?
このようなお悩みの解決のヒントになれば嬉しいです。
筋肉疲労と筋肉痛についてです。
最近、私はマラソンを始めております。久々にやりますと3日間筋肉痛になりました(笑)。
これは身体の中でどういうことが起こっているのでしょうか。
運動をして筋肉痛になってお辛い方、またその対処法でお悩みの方は、どうぞご覧ください。
- 筋肉痛を早く治したい方
- 筋肉痛を予防したい方
筋肉痛と筋肉疲労を早期回復するヒント
運動をした次の日に歩けなくなる筋肉痛
お寺の長い階段を登っていると、だんだんだるくなってきます。
これは筋肉が疲れている状態の筋肉疲労です。
筋肉を使うときにはエネルギーが必要です。
少し専門的にいいますと、カラダの中では筋肉が収縮するときATP(アデノシン三リン酸)という物質が、ADP(アデノシン二リン酸)とリン酸に分解される時に出るエネルギーを使います。その最初の供給源は筋肉の中にあるクレアチンリン酸がクレアチンとリン酸に分解される時に出るエネルギーです。
これがなくなると解糖系やクエン酸回路でブドウ糖を分解してエネルギーを得るようになっているのです。
筋肉疲労には急性と慢性がある
筋肉の疲労には急性と慢性があります。
運動のスピードが遅くなったり動作を続けられなくなる急性の疲労はエネルギーの不足もひとつの原因です。
例えばチーターは走るのが早いですが、持続力がありません。
これは筋肉疲労が関係します。

急性の疲労はエネルギー不足も原因の一つ
筋肉は収縮するためにエネルギーを使います。
まずは筋肉の中にあるクレアチンリン酸という物質からエネルギーを取り出します。
このエネルギーはすぐ使えるのですが7〜8秒しか持ちません。
そうしたら次に筋肉の中に溜め込まれているグリコーゲンからブドウ糖を取りだし、まず酸素を使わない解糖系でエネルギーを供給します。
そして次に酸素を使う有酸素のプロセスでブドウ糖を分解してエネルギーを得るのです。
しかし有酸素のプロセスには時間がかかります。
だから、その前の段階で得たエネルギーを使い果たしてしまうと筋肉が動きにくくなってしまうのです。

乳酸が必ずしも筋肉疲労の原因ではない
先程のエネルギーのお話ですが解糖系でエネルギーを使うと乳酸ができます。
これが筋肉疲労の原因であるという説がありますが医学的根拠はないそうです。
最近では、乳酸ができる過程で水素イオンが作られるため筋肉が酸性に傾き、エネルギー源である筋肉の中のグリコーゲンの蓄えが少なくなる事などが関係していると考えられています。
スクワットやダンベルなどで筋肉痛になりやすいのですが、これは伸張性収縮といって、伸ばされながら大きな力を使う時の運動です。
この時に筋肉痛になりやすいといわれています。
筋肉痛の原因
トレーニングなどで普段使わない筋肉を使ったり、同じ動作を繰り返したりすると、筋肉の中にある筋線維に小さな傷ができます。
その傷を修復する時に炎症が起こり、プロスタグランジンやブラジキニンなどの痛みを出す物質が作られて、筋肉痛が出ると考えられています。
肩こりなどの慢性の疲労は血行不良が原因といわれています。血行不良ということは酸素欠乏です。酸素が少なくなると脳では痛みとして認識します。
炎症とは
何かに足をぶつけたり、足首をねじったりしたら炎症が起こります。この炎症が起きている時っていうのは、組織的には、どのようなことが起こっているのでしょうか?
- 白血球が集まり腫れる(火傷した時のように水分が集まる)
- 痛みが起こる(プロスタグランジンなどの物質が痛みを伝える)
- 熱を持つ
筋肉痛とは
運動をして、しばらくしてから痛くなるのを遅発性筋痛といいます。
一般的には、この痛みを「筋肉痛」と呼んでいます。
なぜ?筋肉痛は暫くしてから痛くなるのか
普段から、よく使っている筋肉には、毛細血管にも血がよく通っています。
道路でいいますと高速道路は渋滞なくスイスイ走れる感じです。
ですが、あまり通らない山道などは、流れもスムーズではない状態と同じで、身体の中の毛細血管も流れが悪くなっていると考えられます。
痛みの物質も血流と関係しますので、それだけ血流が悪いと痛みを感じるのも遅いという理屈なのです。ちなみに年齢によって、「筋肉痛が次の日にくるのは若い証拠」という人がいますが、確固たる証拠はありません。
言えるのは、普段から運動を続けている方は、筋肉痛になっても、早く良くなる方が多いです。
つまり血流がよくなると筋肉痛も早く良くなっていくものと考えられますので、急な運動よりも、普段から少しづつ運動することをオススメいたします。
また最初に痛かった部分の近くの上下左右の筋肉も脊髄神経の関係で一緒に痛く感じるものなのです。
参考文献:「痛みのかんがえかた」より
神経が過敏になっている
筋肉を使ったことで筋肉の深い部分にあるセンサーが感じ取って神経の末端にある痛みを伝える受容体が興奮して脳に伝えます。これが筋肉痛ですが、最近の研究では、激しく筋肉を使うと「神経成長因子」と呼ばれる物質が出て神経が過敏になり、ちょっと動かしても痛みを感じやすくなってしまいます。
正座をした時に5分くらいすると、足が痺れてきます。すると痛みを感じます。この時は神経過敏の状態です。
これをもっと放置すると、感じなくなります。これが「麻痺」の状態です。このような仕組みを「神経変性」といいます。
当院では重症の方が多いので慢性の肩こりの場合、あまり体の痛みを感じにくくなっている方がいらっしゃいます。
「私、美容院で凄い肩こりですね」と言われても「いつもこんな感じだから肩こりを感じないの」と言われる方がいらっしゃいますが、これは失体感症になっていて「麻痺」状態になっている可能性があるのです。
参考文献:「運動に関わる筋肉のしくみ」より
筋肉痛を早く和らげる方法
- できるだけ痛い筋肉を使わない
- 筋肉に熱感がなく痛みが落ち着いていたら蒸しタオルなどでゆっくり温める
- 痛みが強い場合や熱がある場合は一時的に冷やす
- 血行障害による運動直後に冷やしたら悪化する場合があるので注意する
- お風呂に入って全身を温めてリラックスする
- タンパク質(大豆・魚・肉)とビタミンB群を摂取する
- 疲労回復にビタミンCとE、ポリフェノールを摂取する
筋肉疲労の予防
筋肉が疲れにくくしたい場合は、適度な運動の習慣をつけることが大切です。
いきなり負荷の強い運動を短期的にするのではなく、負荷の小さい運動から始めて、それを継続していただくことが大切です。
また運動前後にはクールダウンとウォーミングアップはしっかりとやってください。
お風呂でのぬるま湯でのリラックスも効果がありますので、運動後は、ゆったりとしてください。
また食事も炭水化物や脂肪、ではなくタンパク質を中心とした食事を心がけてください。
ストレッチの注意点
筋肉は三層構造になっています。
まずは表面の大きな筋肉で浅い皮膚に近い部分です。ここは瞬発力に関係します。
中層の筋肉は安定筋です。横隔膜などの呼吸するためなど日常生活で最低限動かすことができる筋肉です。中層筋は血液やリンパの循環に影響します。
そして深い部分の深層筋です。関節の近くの筋肉で靭帯を守ってくれています。インナーマッスルといわれています。
大切なのが深部までストレッチすると危険ということです。この深い部分を伸ばしすぎるとパフォーマンスが低下したり、ケガをする確率が高くなってしまうこともあります。
ですのでストレッチをして深い部分まで伸ばしすぎないように注意してください。
- パートナーから背中を勢いよく押してもらうのはダメ
- 膝を外に曲げて太ももの前を伸ばさない(膝はねじりに弱い)
- 伸ばしたい筋肉を意識してストレッチする
参考文献:「伸ばさずに縮めるマッスルユニットトレーニング」より
まとめ
- 運動前後のウォーミングアップとクールダウンを念入りにする
- タンパク質中心の食事を心がける
- いきなり激しい運動をしない
- 負荷の少ない運動を継続する