
マラソンやランニングを続けていると、「走っている途中から膝の外側が痛くなる」「距離を伸ばすと膝や足に違和感が出る」と悩む方は少なくありません。
せっかく健康や趣味のために走っているのに、痛みのために練習を休んだり、大会への参加をあきらめたりするのはつらいものです。
マラソンで膝を痛める原因は、フォームだけとは限りません。練習量や走るペース、疲労の蓄積、過去のケガ、身体の使い方など、いくつかの要因が重なっていることがあります。
私自身もマラソンを経験し、フルマラソンを走ったことがあります。また、実業団や競技選手を指導されていた講師の先生から、マラソンのトレーニングについて学んだ経験もあります。
この記事では、その経験も交えながら、膝や足への負担をできるだけ減らし、長くマラソンを楽しむための練習の考え方や身体づくりについて、わかりやすくお伝えします。
- マラソンやランニングが趣味の方
- 走ると膝の外側や内側が痛くなる方
- フルマラソン完走を目指している方
- 練習量を増やすと身体のどこかが痛くなる方
- ケガを繰り返さず、長くランニングを楽しみたい方
マラソンで膝が痛くなる要因は一つではありません
「膝が痛いから膝が悪い」
「フォームが悪いから痛くなる」
「筋力がないから痛くなる」
このように一つの原因だけで考えたくなりますが、ランニングによる痛みはそれほど単純ではありません。
研究でも、ランニングによるケガには、練習量や練習強度、過去のケガ、身体の特徴、健康状態、生活習慣、走り方など複数の要因が関係すると考えられています。
そのため、膝が痛くなったときには「どの筋肉が弱いか」だけを見るのではなく、
- 最近急に走る距離を増やしていないか
- 速いペースの練習が続いていないか
- 坂道や路面など練習環境が変わっていないか
- 十分に休めているか
- 睡眠不足や疲労が続いていないか
- 以前に膝や足首を痛めたことがないか
なども一緒に振り返ってみてください。
特に「練習量をどの程度増やせば安全なのか」については、すべてのランナーに当てはまる絶対的な数字があるわけではありません。
大切なのは、自分の身体の状態を確認しながら段階的に負荷を上げていくことです。
フルマラソンをケガなく完走するために大切なこと
フルマラソンは42.195kmあります。
普段ほとんど走っていない方が、いきなりこの距離に挑戦すると身体への負担が大きくなります。
まず必要なのは「速く走る能力」より、長い時間身体を動かし続けられる土台をつくることです。
私がマラソンの実業団や競技選手を指導されていた講師の先生から学んだときにも、特に印象に残ったのが「余裕を残して練習する」という考え方でした。
もちろん、具体的なペースや走行距離は年齢や経験、目標タイムなどによって変わります。
初心者であれば、最初から速さを追い求めるよりも「今日はまだ走れそう」と感じる程度で練習を終え、少しずつ身体を慣らしていく方が現実的です。
「たくさん走れば強くなる」とは限りません
私が高校生の頃はサッカー部でした。
当時は、うさぎ跳びをしたり「練習中に水を飲むな」と言われたりすることも珍しくありませんでした。
今考えると、スポーツに対する考え方はずいぶん変わりました。
ランニングでも同じです。
「月に何km走った」「昨日より長い距離を走った」という数字だけを追いかけると、身体の回復が追いつかなくなることがあります。
走行距離は大切な指標の一つですが、距離だけでトレーニングの良し悪しを判断することはできません。
距離、速さ、頻度、坂道などによる負荷、そして回復とのバランスを考えることが大切です。
周りのランナーのペースにつられすぎない
これは私自身がマラソンを経験して強く感じたことです。
大会になると周りにたくさんのランナーがいます。
スタートすると気分も高揚するので、普段より自然とペースが上がることがあります。
私自身もレースの前半5kmくらいを、普段の練習よりかなり速いペースで走ってしまったことがあります。
周りのランナーにつられてしまったのです。
しかし、普段から自分のペースを計測していたため「ちょっと速すぎる」と途中で気づくことができました。
近くを走っていた経験豊富なランナーがペースを落としているのを見たこともあり、私もそこで冷静になることができました。
フルマラソンは、スタート直後の数kmではなく42.195km全体で考えるスポーツです。
前半に余裕を残すことが、後半まで自分の走りを続けるためには重要です。
スピード練習はどう考えればいい?
「速くなりたいなら、とにかく速く走る練習をすればいい」というわけではありません。
もちろん記録を目指す段階になれば、ペース走やインターバルトレーニングなどを取り入れることもあります。
しかし、ランニングを始めたばかりの方や、ケガを繰り返している方の場合、まずは余裕を持って走れる身体をつくることを優先した方がよいケースがあります。
例えば、
- 楽に会話できる程度のペースで走る
- 距離を急に増やさない
- 疲労が強ければ休む
- 速い練習ばかりを続けない
- 痛みが出る条件を確認する
といった基本を大切にしてください。
「もっと走らないと不安」という気持ちより、「次の練習まで回復できるか」という視点も持ってみましょう。
フルマラソンの練習は段階を分けて考える
私が講習会で学んだ内容でも、いきなりレース用の練習をするのではなく、段階を分けて身体をつくっていくことが大切とされていました。
①まずは基礎づくり
最初は、ゆっくりしたペースでも一定時間動き続けられる身体をつくります。
走ることに慣れていない方なら、ウォーキングを組み合わせても構いません。
「走る距離」だけにこだわらず、身体が運動に慣れていく期間と考えてください。
②少しずつ距離や時間を伸ばす
身体が慣れてきたら、一度にすべてを増やすのではなく、距離や時間などを少しずつ調整します。
前回の練習から疲労が残っている場合は、予定通りに走ることより休養を優先することも大切です。
③目標に合わせた練習を加える
フルマラソンの完走やタイム更新を目指す場合には、ある程度身体ができてからロング走やペース走などを取り入れていきます。
ただし、年齢、運動歴、過去のケガなどによって適切な内容は変わります。
誰かの練習メニューをそのまま真似するのではなく、自分に合わせて調整してください。
④レース前は疲労を抜く
大会が近づくと「練習が足りないのではないか」と不安になり、直前まで走り込みたくなることがあります。
しかし、疲労を残したまま本番を迎えてしまっては、それまでの練習を十分に発揮できません。
レース前は新しいことを始めるより、体調を整えながら当日に向けて調整していくことが大切です。
マラソンで起こりやすい膝や足のトラブル
ランニングでは膝だけでなく、足首や下腿などにも負担がかかります。
代表的なものとして、
- 腸脛靭帯炎など膝外側の痛み
- 膝のお皿周辺の痛み
- 鵞足部など膝内側の痛み
- アキレス腱周辺の痛み
- ふくらはぎの筋肉のトラブル
- シンスプリントなどすね周辺の痛み
- 足首の捻挫
- 疲労骨折
などがあります。
ただし、「膝の外側が痛いから腸脛靭帯炎」と症状だけで決めることはできません。
同じ場所の痛みでも原因はさまざまです。
「フォームが悪いから痛い」と決めつけない
ここは特に大切です。
ランナーさんから、「フォームが悪いから膝が痛いのでしょうか?」「ふくらはぎが張るのは走り方がおかしいのでしょうか?」と聞かれることがあります。
走り方が関係するケースはあります。
しかし、太ももやふくらはぎが痛いというだけで「フォームが悪い証拠」とは言えません。
疲労、走行距離、筋肉や腱への負荷、路面、シューズ、以前のケガなど、ほかの要因も考える必要があります。
フォームは「正しい・間違っている」と二つに分けるものではなく、その人の身体や走る速度によっても変化します。
痛みが続いている方は、自己判断だけでフォームを大きく変えるより、身体の状態を一度確認することをおすすめします。
痛みを我慢して走り続けない
ランニングをしていると多少の疲労感や筋肉痛が出ることはあります。
しかし、「走るたびに同じ場所が痛くなる」「走っている途中から痛みが強くなる」「翌日まで痛みがかなり残る」という場合は、そのまま練習を続けるより一度負荷を下げてみてください。
痛みをかばって走ることで、本来とは違う動きになることもあります。
大事な大会が近づいているほど、休むことに不安や焦りを感じると思いますが、一度状態を確認して練習内容を調整することも、長くマラソンを続けるためのトレーニングの一つです。
膝の痛みは医療機関での確認が必要なこともあります
すべての膝の痛みがランニングによる疲労とは限りません。
特に、
- 強く腫れている
- 体重をかけることが難しい
- 膝が引っかかって動かしにくい
- 膝が突然ガクッとする
- 転倒や衝突のあとから強く痛む
- 安静にしていても強い痛みが続く
といった場合には、整形外科など医療機関で一度確認してもらうことをおすすめします。
整体・整骨院では画像検査や病気の診断を行うことはできません。
必要に応じて医療機関と役割を分けて考えることが大切です。
私が高橋尚子さんから教えてもらったこと
私にはマラソンについて今でも覚えている経験があります。
以前、高橋尚子さんからレース前に、苦しくなってきたときは下ばかり見ず、少し前方へ視線を向けて腕を振るというアドバイスをいただいたことがあります。
実際に走ってみると、とても参考になりました。
疲れてくるとどうしても身体が小さくなり、視線も下がってきます。
そのときに一度視線や腕振りを意識することは、私自身が走る中でも役立ちました。
ただし、これは私自身の経験です。
ランニングフォームには個人差がありますので、すべての方に同じ方法が合うという意味ではありません。
当院では膝だけでなく身体全体を確認します
おおくま整骨院では、マラソンやランニングによる膝の痛みについて相談を受けた場合、痛みのある膝だけを見るのではなく、股関節、骨盤、太もも、下腿、足首などの状態も確認します。
また、
- いつから痛いのか
- 何kmくらいから痛くなるのか
- 練習量を変えていないか
- 坂道やスピード練習で変化するか
- 過去にケガをしていないか
などもお聞きしながら身体の状態を確認していきます。
施術では強い刺激を加えるのではなく、身体の状態に合わせて痛みの少ない方法を選択しています。
必要に応じてテーピングなどを行うこともあります。
ただし、強い腫れや外傷、荷重できないほどの痛みなどがある場合には、まず医療機関での検査をおすすめする場合があります。
よくある質問
- Q走ると膝の外側が痛くなるのはランナーズニーでしょうか?
- A
膝の外側の痛みでは腸脛靭帯周辺の問題がみられることがありますが、痛む場所だけで原因を判断することはできません。痛みが続く場合や腫れなどがある場合は、整形外科などで確認してもらうことをおすすめします。
- Q膝が少し痛くても走って大丈夫ですか?
- A
痛みの程度や原因によって異なるため、一律には判断できません。走るほど痛みが強くなる、翌日にも痛みが残る、同じ場所の痛みを繰り返す場合には、練習量を減らして身体の状態を確認することをおすすめします。
- Qマラソン前はどれくらい走り込めばよいですか?
- A
年齢、運動歴、目標タイム、過去のケガなどによって異なるため「何km走れば大丈夫」という共通の基準はありません。急激に負荷を増やすのではなく、体調や回復状態を確認しながら段階的に練習することが大切です。
- Q膝を痛めないためには筋トレも必要ですか?
- A
筋力トレーニングが役立つ場合はありますが、筋力だけでケガを防げるわけではありません。股関節や脚の筋力だけでなく、練習量、回復、走り方なども含めて総合的に考えることが大切です。
- Q整体でランニングによる膝の痛みをみてもらえますか?
- A
当院では膝だけでなく、股関節、骨盤、太もも、下腿、足首なども確認し、身体の状態に合わせて施術を行います。ただし診断や画像検査はできないため、症状によっては医療機関での検査をおすすめします。
まとめ|「たくさん走る」より「長く走り続けられる身体」を
フルマラソンを目指すと、「もっと走らなければ」「もっと速くならなければ」と考えてしまうことがあります。
しかし、大切なのは一回の練習で頑張り切ることではありません。
- 自分の体力に合わせて段階的に練習する
- 距離だけでなく疲労や体調も確認する
- 周りのランナーにつられて無理をしない
- 痛みを繰り返す場合は負荷を見直す
- 必要な場合は医療機関で確認する
こうした基本を積み重ねることが、結果的に長くマラソンを楽しむことにつながります。
「膝が痛くなるけれどマラソンは続けたい」
そのような方こそ、無理に痛みを我慢するのではなく、一度立ち止まって身体の状態や練習方法を振り返ってみてください。
走ることをやめるためではありません。
これからも長く走り続けるために、身体の声を聞きながら練習していきましょう。

参考文献
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- van der Worp MP, et al. Iliotibial band syndrome in runners: a systematic review. Sports Medicine. 2012.
- Aderem J, Louw QA. Biomechanical risk factors associated with iliotibial band syndrome in runners: a systematic review. BMC Musculoskeletal Disorders. 2015.
- The Association Between Running Injuries and Training Parameters: A Systematic Review. Journal of Athletic Training. 2022.
- Risk factors for running-related injuries: An umbrella systematic review. 2024.
- ter Steege RWF, Kolkman JJ. The pathophysiology and management of gastrointestinal symptoms during physical exercise, and the role of splanchnic blood flow. Alimentary Pharmacology & Therapeutics. 2012.




