

病院では良性発作性頭位めまい症といわれました。
ふわふわする時もあれば、急に振り向いたり、座った時にグラグラ回るような「めまい」が起こります。
1分くらいですぐ治まるのですが、気持ち悪く吐き気もして恐怖です。
薬を飲んでますが、なかなか良くなりません。
どうしたら良いでしょうか?
「朝、布団から起き上がった瞬間、天井がグルグル回った!」
「寝返りをしただけなのに、突然めまいがして怖くなった」
「まためまいが起きると思うと、外出するのも不安……」
そんな経験はありませんか?
めまいは、たった30秒でも本当に怖いものです。
しかも、一度経験すると「また起こったらどうしよう」と不安になり、寝返りをすることさえ怖くなってしまう方もいらっしゃいます。
実は、頭を動かしたときに起こる短時間のめまいには、耳の中にある小さな「耳石」が関係していることがあります。
その代表が、良性発作性頭位めまい症(BPPV)です。
今回は、めまいが起こる仕組みをカーナビに例えてわかりやすく説明し、ご自宅でできるエプリー法の動画や、当院での実際のご相談例をご紹介します。
めまいの仕組みが分かれば、必要以上に怖がらずに向き合うヒントが見つかるかもしれません。
- ふわふわする目眩でお悩みの方
- グルグル回るような目眩でお悩みの方
- 頭を動かすと、目眩が起こる方
- 眩暈が起こるが30秒から1分で治まる方
これ私かも…と思った方へ
朝、目が覚めて寝返りをした瞬間、天井がグルグル!慌てて目を閉じても、まだ回っているような感覚。
「えっ、何これ? 私、どうなっちゃったの?」しばらくするとおさまるのですが、今度は起き上がるのが怖い。
洗濯物を干そうと上を向いたとき、床に落ちたものを拾おうとしたとき、後ろから呼ばれて振り向いたとき。
何気ない動きが、めまいのきっかけになることがあります。
そして厄介なのが、めまいそのものだけではありません。
「スーパーで倒れたらどうしよう」「子どもと出かけているときに起きたら?」「明日の朝もまたグルグルするのかな?」まだ起きていないめまいまで、頭の中で何度も想像してしまうのです。
めまいは数十秒でも、その後の不安は何時間も続くことがあります。
これでは、身体も心もなかなか休まりませんよね。
めまいの種類

- ふわふわするめまい
- グルグル回るようなめまい
- 頭を動かすと症状が出る
- 30秒〜1分くらいでおさまる
- 吐き気を伴うことがある
- 外出が怖くなる
いくつか重なっている方も多いです。
めまいの原因

めまいは、体の中の「バランスセンサーのズレ」で起こることがあります。
たとえると、カーナビがズレた状態で走っているような感じです。
目・耳(三半規管)・体の感覚この3つの情報がうまく合わないと、「今どこ?」「どう動いてる?」
と脳が混乱してしまいます。
その結果、グラグラしたり、回るような感覚が出てしまいます。
基本的な眩暈の原因
めまいの原因の基本的なところは「入力」と「出力」の問題があったり、それを統合する中枢(脳)の問題があると起こることが考えられます。
例えば、目の動きに機能低下があったり、バランスを感じる小脳や三半規管に問題があると情報が間違っているので、統合する脳もその間違った情報に見合った通りに出力してしまうことがあります。するとバランスをとったり自律神経の機能である血圧のコントロールに誤作動が起こります。
ですので、どの部分に問題があるのかを把握することが大切になってきます。
良性発作性頭位めまい症とは?30秒ほどでおさまるめまいの特徴
良性発作性頭位めまい症(BPPV)は、頭の位置を変えたときに、突然グルグル回るようなめまいが起こる病気です。
特に多いのが、後半規管(こうはんきかん)という場所に耳石が入り込むタイプです。
例えば、次のような場面で起こりやすくなります。
- 朝、布団から起き上がる
- 寝返りをする
- 上を向いて洗濯物を干す
- 美容院で頭を後ろに倒す
- 下を向いて靴を履く
特徴は、頭を動かした直後にグルグルするめまいが起こり、しばらくするとおさまることです。
多くは数秒から30秒程度、通常は1分以内におさまります。
ただし、めまいがおさまっても、吐き気やふわふわする感じが残る方もいらっしゃいます。
ここで知っていただきたいことがあります。
30秒でおさまるからといって、すべてがBPPVとは限りません。
耳鼻咽喉科などでは、頭の位置を変えたときのめまいと眼球の動き(眼振)を確認し、どの半規管に問題があるかを調べます。
原因となる場所が分かると、それに合わせた対応を考えることができます。
なぜ後半規管に耳石が入りやすいの?
耳の奥には、身体の傾きや動きを感じ取る小さなセンサーがあります。
その一つが三半規管です。
三半規管は、前半規管・後半規管・外側半規管の3つからできています。
このうち、BPPVで特に多いのが後半規管型です。
耳石は本来、耳石器という場所にあります。
ところが、何らかの理由で耳石がはがれ、三半規管に入り込むことがあります。

後半規管は、重力の影響で耳石が入り込みやすい位置関係にあるため、BPPVの中でも多いと考えられています。
イメージとしては、排水管の中に小さな砂粒が入り込んだようなものです。
頭を動かすと、その砂粒が移動して、管の中の液体を動かしてしまう。
すると、耳のセンサーが「まだ頭が動いていますよ!」と脳に知らせてしまうのです。
本人はもう止まっているのに、耳からは「まだ回っています!」という情報が届く。
この情報のズレが、あのグルグルする感覚につながります。
めまいはカーナビの位置情報がズレたようなもの
私はめまいの仕組みを説明するとき、カーナビに例えることがあります。
車はまっすぐ走っているのに、カーナビの画面では車が横道に入っていたらどうでしょう?
「えっ? そっちには曲がってないけど?」ちょっと混乱しますよね(笑)
私たちの脳も、これと似たようなことをしています。
脳は、主に3つの情報を使って身体のバランスを調整しています。
| センサー | 役割 |
|---|---|
| 目(視覚) | 景色や周囲の動きを確認する |
| 耳(前庭感覚) | 頭の回転や傾きなどを感じ取る |
| 筋肉・関節(固有受容感覚) | 手足や身体の位置を知らせる |
この3つの情報を脳幹や小脳などが統合して、姿勢や目の動きを調整しているのです。
例えば、寝返りをして頭を止めたとします。
目は「もう動いていません」と知らせています。
身体のセンサーも「止まっています」と知らせています。
ところが、三半規管に入り込んだ耳石が動くと、耳からは「まだ動いています」という情報が届くことがあります。
脳からすると、まるで3人の案内人が違うことを言っているような状態です。
「止まったよ!」「動いてないよ!」「いや、まだ回ってるって!」……ちょっと、誰を信じたらいいの? という感じですよね(笑)
このような感覚情報の不一致が、めまいやふらつきを理解する一つの手がかりになります。
ただし、めまいの原因は耳石だけではありません。目や耳、脳、血圧など、さまざまな仕組みが関わることがあります。
小脳は身体のバランスを調整する司令塔
もう一つ大切なのが小脳の働きです。
小脳は、目や耳、筋肉・関節からの情報などを使い、動作のタイミングや姿勢を細かく調整しています。
例えば、目を閉じて自分の鼻を指で触ってみてください。
目で見なくても鼻に触れられるのは、身体の位置を感じる感覚や、小脳などの働きがあるからです。
脳は毎日、私たちが意識していないところで、とても複雑な調整をしています。
普段は当たり前に歩けること、まっすぐ立てること、振り向いても景色が大きくブレないこと。
実は、かなり高度な仕事なんですね。
その情報処理のどこかに問題が生じると、めまいやふらつきとして感じられる場合があります。
だからこそ、私は「めまいだから耳だけ」と決めつけず、身体全体の状態にも目を向けることを大切にしています。
めまいが怖くなるのは、脳が危険を覚えてしまうから?
めまいを何度も経験すると、症状が出ていないときにも不安になることがあります。
「またグルグルしたらどうしよう」「この動きをしたら危ないかも」こうした不安は、予期不安と呼ばれます。
私たちの脳には、危険だった経験を覚え、次に備えようとする働きがあります。
例えば、一度熱い鍋に触ったら、次からは慎重になりますよね。
それと同じように、めまいを経験すると、寝返りや外出などの動作を警戒することがあります。
これは、自分を守ろうとする自然な反応でもあります。
ところが、警戒が強くなりすぎると、身体に力が入り、首や肩が緊張し、呼吸も浅く感じられることがあります。
さらに不安が強くなると、ふらつきにも敏感になってしまう。
こうして、
めまいが起こる → 怖くなる → 身体が緊張する → ふらつきが気になる → さらに怖くなる
という悪循環につながる場合があります。
ここで大切なのは、耳石によるBPPVと、不安によって強まる身体の反応を分けて考えることです。
不安だけが原因で耳石が動くわけではありません。
しかし、めまいの経験によって不安が強くなり、日常生活がつらくなることはあります。
当院では、こうした心理面にも目を向けながら、安心して身体を動かせる状態を一緒に考えていきます。
30代女性|めまいが怖くて子どもと公園に行けなかった方
以前、良性発作性頭位めまい症と診断された30代の主婦の方が来院されました。
めまいがつらく、外出することも難しい状態でした。
この方の願いは、とてもシンプルでした。
「子どもたちと一緒に公園で遊びたい」特別なことをしたいわけではありません。
子どもと外に出て、一緒に遊んで、普通に一日を過ごしたい。
でも、めまいが起こるかもしれないと思うと、なかなか外に出られなかったのです。
当院では、背骨や頭・首まわりの緊張、全身のバランスなどを確認しながら、やさしい施術を行いました。
また、めまいに対する不安についてもお話を伺い、無理のない範囲で身体を動かす体操をお伝えしました。
この方は、ご自宅でもコツコツと体操を続けられました。
6回目くらいから少しずつ変化を感じられ、めまいの頻度が減り、外出できる日も増えていきました。
そして、ついにお子さんたちと公園へ行けるようになられたのです。
私にとってうれしかったのは、単にめまいが少なくなったことだけではありません。
「子どもと公園に行きたい」その当たり前だった日常を、また楽しめるようになられたことです。
もちろん、これは一人の方の経過であり、施術だけによる変化と断定することはできません。
それでも、めまいに振り回されていた生活から、ご自身のやりたいことに少しずつ向かえるようになられた姿が印象に残っています。
エプリー法とは?耳石を移動させる代表的な方法
ここからは、実際にめまいで悩んでいる方に知っていただきたい体操をご紹介します。
それが「エプリー法」です。
エプリー法は、良性発作性頭位めまい症の中でも、特に多い後半規管型に用いられる代表的な耳石置換法です。
難しそうな名前ですが、考え方はとてもシンプルです。
三半規管に入り込んだ耳石を、頭の向きを順番に変えることで、本来の耳石器へ移動させようとする方法です。
例えば、曲がった水路に小さなビー玉が入り込んだと想像してみてください。
水路を適切な方向に傾けていけば、ビー玉を出口へ移動させることができますよね。
エプリー法も、それに似た考え方です。
ただし、頭を適当にグルグル動かせばよいわけではありません。
耳石が入り込んだ場所や左右の違いによって、動かす方向が異なります。
そのため、まず耳鼻咽喉科などでBPPVの種類や原因となる側を確認してもらうことが大切です。
当院では、実際の動きをイメージしやすいように動画で紹介しています。
エプリー法の手順をわかりやすく説明します

ここでは、左の後半規管に耳石が入り込んでいる場合を例に説明します。
医療機関などで原因となる側を確認してもらい、自宅で行ってよいと案内された方は、動画と合わせて参考にしてください。
① ベッドに座り、顔を左45度に向けます。
② 左を向いたまま仰向けになり、肩の下に置いた枕などで頭が少し後ろに傾く姿勢をとります。そのまま約30秒待ちます。
③ 頭を持ち上げず、今度は右方向へ90度回し、顔が右45度を向いた状態で約30秒待ちます。
④ さらに身体ごと右側へ寝返りし、顔が斜め下を向くようにします。そのまま約30秒待ちます。
⑤ 最後に右側からゆっくり起き上がります。
右の後半規管が原因の場合は、左右を反対にして行います。
それぞれの姿勢で30秒程度待つのは、耳石が移動する時間を確保するためです。めまいが続く場合は、医療者の指示に従って時間を調整します。
注意したいのは、「左を向くとめまいがするから左耳が原因」と自分だけで判断しないことです。
頭を動かしてめまいが起こる方向と、原因となっている耳は、必ずしも単純に一致しません。
また、首や腰に問題がある方、血管の病気などがある方は、この動きが適さない場合があります。
強い吐き気や不調が出た場合は無理をせず中止してください。
無理に頑張る体操ではありません。安全に、正しい方向へ行うことが大切です。
エプリー法は何回すればいいの?
「1回で変化がなかったら、何度も繰り返した方がいいですか?」
という質問をいただくことがあります。
エプリー法は、1回で症状が軽くなる方もいれば、複数回必要になる方もいらっしゃいます。
ただし、回数を増やせば必ず良くなるわけではありません。
そもそも後半規管型ではない場合は、別の方法が必要になることもあります。
大切なのは回数よりも、原因となっている場所に合った方法で行うことです。
体操をしても症状が続く場合や、めまいの性質が変わった場合は、再度確認してもらうとよいでしょう。
めまいがあるとき、身体を動かしてもいいの?
めまいを経験すると、怖くてなるべく頭を動かさないようにする方がいらっしゃいます。
もちろん、強いめまいがあるときに無理をする必要はありません。
ただし、原因が確認され、安全に動ける状態であれば、少しずつ普段の動きを取り戻していくことも大切です。
なぜなら、私たちの脳には、感覚情報の変化に少しずつ適応していく働きがあるからです。
これを前庭代償といいます。
例えば、新しい靴を履いたとき、最初は少し違和感があっても、歩いているうちに慣れてくることがありますよね。
脳にも、感覚の変化を学習して調整する仕組みがあるのです。
ただし、耳石を元の場所へ移動させるエプリー法と、脳の適応を促す前庭リハビリテーションは、目的が異なります。
めまいの種類によって、必要な取り組みも違ってきます。
「めまいだから、とにかく動かない」でも、「頑張って動けばいい」でもありません。
自分の状態に合った動き方を見つけることが大切なのです。
当院では、耳だけでなく身体全体の状態にも目を向けます
当院では、めまいのある方に対して、首や肩、背骨の緊張、姿勢、呼吸、睡眠、ストレスなども確認しています。
耳石によるめまいの場合、原因となっている耳石そのものに対しては、エプリー法などの耳石置換法が中心になります。
一方で、何度もめまいを経験すると、身体が緊張し、不安によって日常の動作が怖くなってしまうことがあります。
そんなとき、私は身体と心理面の両方から考えることを大切にしています。
オステオパシーの考え方を取り入れたやさしい施術で、首・肩・背中などの緊張や身体の動きに目を向けます。
また、めまいが起こることへの不安、睡眠不足、食生活なども必要に応じて一緒に整理していきます。
大切なのは、単に「めまいを何とかする」ことだけではありません。
めまいを怖がるあまり、できなくなってしまったことを、少しずつ取り戻していくこと。
- 買い物に行きたい
- 電車に乗りたい
- 子どもと遊びたい
- 安心して眠りたい
そんな日常を大切にしながら、一人ひとりの身体と向き合っています。
よくある質問
- Q良性発作性頭位めまい症は自然に治ることもありますか?
- A
はい。BPPVは自然におさまることもあり、数日から数週間で症状が軽くなる方もいらっしゃいます。ただし、繰り返す場合や長引く場合もあります。原因となる半規管が分かれば、エプリー法などで対応できることがあります。まずはめまいの種類を確認することが大切です。
- Q30秒くらいでめまいがおさまるのは、良性発作性頭位めまい症の特徴ですか?
- A
はい。後半規管型BPPVでは、寝返りや起き上がりなどで突然グルグルするめまいが起こり、多くは数秒〜30秒程度、通常1分以内におさまります。ただし、時間だけでは診断できません。頭の位置による症状や眼振などを確認することが大切です。
- Qエプリー法は自宅で毎日行っても大丈夫ですか?
- A
BPPVの種類や原因となる耳が確認され、自宅で行ってよいと案内された場合には取り組めます。ただし、首や腰の病気などがある方は注意が必要です。回数や頻度は医療者の指示に従い、強いめまいや吐き気が出る場合は無理をしないでください。動画だけで自己判断せず、正しい方法で行うことが大切です。
- Qめまいが治まったのに、ふわふわする感じが残るのはなぜですか?
- A
BPPVの回転性めまいがおさまっても、ふわふわする感じや不安定さがしばらく残ることがあります。身体のバランス調整や、めまいに対する不安などが関係する場合もあります。ただし、別の原因が隠れている可能性もあるため、長く続く場合は確認が大切です。
- Q整体ではめまいに対してどのようなことをするのですか?
- A
当院では、首・肩・背骨などの緊張や動きを確認し、オステオパシーを取り入れたやさしい施術を行います。また、めまいへの不安、睡眠、ストレス、生活習慣なども一緒に考えます。耳石によるBPPVには適切な耳石置換法が重要ですが、当院では身体の緊張や心理面にも目を向け、日常生活を送りやすくするお手伝いをしています。
まとめ
めまいは、たった30秒でも日常生活を大きく変えてしまうことがあります。
寝返りが怖い。外出が怖い。また起こるかもしれない。
そんな不安が続くと、身体も心も疲れてしまいますよね。
でも、めまいにはさまざまな原因があり、仕組みが分かることで適切な対策を考えやすくなります。
特に良性発作性頭位めまい症では、耳石が関係していることがあり、エプリー法などが役立つ場合があります。
そして、めまいが落ち着いても身体の緊張や不安が残っているなら、そこにも目を向けてあげることが大切です。
私が目指しているのは、単にめまいのことを考える時間を減らすだけではありません。
「まためまいが起こるかも……」から、「今日は何をして楽しもうかな?」へ。
少しずつでも、そんな毎日を取り戻すお手伝いができればうれしいです。
めまいや身体の緊張、不安などでお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

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参考文献
- 日本めまい平衡医学会「良性発作性頭位めまい症診療ガイドライン2023年版」
- Johns Hopkins Medicine:BPPVの原因・特徴・治療
- Johns Hopkins Medicine:自宅で行うエプリー法
- Bhattacharyya N, et al. Clinical Practice Guideline: Benign Paroxysmal Positional Vertigo (Update). Otolaryngology–Head and Neck Surgery. 2017.




