
「毎年、寒くなると手や足の指が赤く腫れる」
「痛いというより、かゆくてたまらない」
「お風呂に入ると余計にかゆくなる」
「冷えているから温めた方がいいの?それとも温めすぎない方がいいの?」
冬になると、このような「しもやけ」で悩まれる方がおられます。
正式には「凍瘡(とうそう)」と呼ばれ、寒く湿った環境にさらされたあと、手足の指や耳などに赤紫色の腫れ、かゆみ、痛みなどが現れる皮膚の炎症です。
ただ単に「手足が冷えたから起こる」というほど単純ではありません。
実は、寒さに対する細い血管の反応と、その後に身体が温まる時の血流の変化が関係していると考えられています。
この記事では、しもやけの血管の中で何が起きているのか、動脈と静脈の違い、正しい温め方、予防、病院で確認した方がよい症状まで、できるだけ分かりやすくお伝えします。
- 毎年冬になると手足にしもやけができる
- 温めるとかゆくなる理由を知りたい
- しもやけをできるだけ予防したい
- 「冷え性だから仕方ない」と思っている
しもやけ(凍瘡)とは?
しもやけは、氷点下で皮膚が凍ってしまう「凍傷」とは違います。
寒いけれど皮膚が凍るほどではない環境、特に寒さと湿気が重なる環境で起こりやすい皮膚の炎症です。
手足の指、耳、鼻、頬など身体の末端に起こりやすく、赤色から赤紫色に腫れ、かゆみ、ヒリヒリした痛み、灼熱感などが出ます。強くなると水疱や皮膚の傷ができることもあります。多くは寒冷刺激を避けることで2〜3週間ほどで改善します。
僕の小学校の親友はほっぺたにできていたのを覚えております。
国内の『今日の治療指針2026年版』では、平均気温4℃前後、1日の気温差が10℃以上になるような環境で起こりやすいとされています。
つまり「ものすごく寒い日」だけではなく、朝晩と昼間の寒暖差が大きくなる初冬や春先にも注意が必要です。
しもやけはなぜ起こる?血管の中で何が起きているのか
ここが今回、一番知っていただきたいところです。
寒いところへ行くと、身体は熱を逃がさないように手足の細い血管を収縮させます。
これは悪いことではありません。
身体の中心部の体温を守るための正常な反応です。
手や足には「動静脈吻合」という、細い動脈と静脈を直接つなぐ特殊な血管がたくさんあり、皮膚からどのくらい熱を逃がすかを調整しています。この血流調節には交感神経も深く関わっています。
問題は、寒さが続いた時です。
血管が強く収縮した状態が長く続くと、指先などの皮膚へ届く血液や酸素が少なくなります。
そして暖かい場所へ移動すると、今度は縮んでいた血管が広がって血液が戻ってきます。
この「冷える→温まる」という変化の中で血管の反応がうまくいかないことが、しもやけにつながると考えられています。
動脈と静脈の「戻るスピード」が違う?

昔から、しもやけの説明でよく出てくるのが動脈と静脈の話です。
動脈は心臓から末端へ血液を運び、静脈は末端から心臓へ血液を戻します。
寒さで両方の血管が収縮したあと身体を温めると、動脈側の血流が静脈側より早く回復することがあり、入ってくる血液に対して戻っていく血液が追いつかず、局所に血液がうっ滞するという説があります。
埼玉県皮膚科医会でも、このような動脈と静脈の回復速度の違いから血液のうっ滞が起こり、周囲の組織へ水分が漏れ出すことが、しもやけの発症機序として推定されています。
ただし、ここは「これがすべての原因」と考えない方がよいでしょう。
しもやけの正確な発症メカニズムは、現在でも完全には解明されていません。
現在は、寒冷による強い血管収縮、末端への酸素供給低下、再加温時の血流変化、血液のうっ滞、そして皮膚の炎症などが組み合わさって起こると考えられています。
しもやけになりやすい人は、寒さで血管が縮みやすい?
2026年に興味深い研究が発表されています。
過去にしもやけになったことがある成人8人と、しもやけのない成人8人を寒い環境に置き、その後温めながら皮膚の血流や酸素の状態を調べました。
すると、しもやけ経験者では寒冷時の皮膚血流がより低くなり、末端への酸素供給も低下していました。
温め始めた時の血流反応にも違いが確認されています。
16人という小さな研究なので、これだけですべてを説明することはできません。
それでも、「しもやけになりやすい人では、寒さに対する末端血管の反応そのものが違う可能性がある」というのは、とても興味深いところです。
単なる「冷え性」だけでは説明できない部分が少しずつ分かってきています。
温めるとかゆくなるのに、温めた方がいいの?
しもやけの不思議なところです。
寒いところではそれほど気にならなかったのに、お風呂に入ったり布団に入ったりすると急にかゆくなることがあります。
実際、しもやけでは皮膚温が上がる時にかゆみが強くなることがあります。
では、温めない方がよいのでしょうか。
そうではありません。
冷えた手足を温めること自体は大切ですが、ポイントは「急激に熱くしないこと」です。
冷えた手足を熱いお湯につける、ストーブの前に近づける、熱い湯たんぽを直接当てる、といった方法はおすすめされていません。
しもやけでは皮膚を「ゆっくり、やさしく」温めることが大切です。
冷え切ってから一気に温めるのではなく、そもそも冷やしすぎない。これが一番大切です。
熱を当てると「かゆみ」が止まる研究もあります
ここでもう一つ面白い話があります。
かゆみに対して、短時間の熱刺激を与えると、一時的にかゆみが弱くなることがあります。
2024年にはアトピー性皮膚炎の方を対象に、49℃の熱刺激を5秒間加える研究が行われ、かゆみを軽減する効果が検討されています。
これは単純に「血流がよくなったから」というより、熱刺激によって感覚神経が刺激され、かゆみを感じる神経の情報が一時的に抑えられることなどが考えられています。
ただし、この研究は「しもやけ」の研究ではありません。
そのため、「しもやけがかゆい時は、熱いペットボトルを当てればよい」ということではないんですよね~。💦
でも、「熱刺激でかゆみが一時的に弱くなることがある」というのは、ちょっと面白い研究です。
しもやけにそのまま使える方法ではありませんが、こういう身体の反応を知っておくのも面白いですね。
しもやけでは、熱いものを直接当てることで皮膚を傷めたり、低温やけどを起こしたりする危険もあります。実際、湯たんぽによる低温熱傷にも注意が必要です。
「熱刺激によってかゆみが一時的に弱くなることがある」という神経の仕組みとして知っておくと面白いですね。
今日からできる、しもやけ対策
大切なのは、できてから何とかするより「冷やしすぎないこと」です。
手袋や厚手の靴下、防水性のある靴などを使い、手足だけでなく身体全体を冷やさないようにします。
靴や靴下が雨や汗で濡れたら、そのままにせず早めに交換してください。寒さに湿気が加わると、しもやけが起こりやすくなります。
また、きつい靴や靴下で指先を強く圧迫し続けるのも避けたいところです。
帰宅して手足が冷えている時は、いきなり熱湯やストーブで温めず、室温や衣類、お風呂などでゆっくり戻していきます。
軽く身体を動かすことも、身体全体の血流を保つうえでは役立ちます。
そして、かゆくても強くこすったり、かきむしったりしないことも大切です。
しもやけと自律神経の関係
寒い時に皮膚の血管を収縮させ、暑い時に皮膚への血流を増やす仕組みには自律神経、特に交感神経が関わっています。
そのため、自律神経と皮膚血流がまったく無関係というわけではありません。
だって体温調節してくれているのは「自律神経」ですもんね。
ただし、「自律神経が乱れたから、しもやけになった」と単純に説明することもできません。
寒さ、湿気、体質、血管の反応、生活環境など、いくつもの要因を一緒に考える必要があります。
当院でも「冷え=自律神経」と決めつけるのではなく、睡眠、活動量、身体の緊張、生活環境なども含めて身体全体を見ていきます。
鉄やビタミンEを摂ればしもやけはよくなる?
以前は、しもやけというと「血流が悪いから鉄を摂ろう」「ビタミンEを摂ろう」と説明されることもありました。
ただ、特定の栄養素を摂れば、しもやけが治るとする十分な根拠はありません。
もちろん鉄欠乏性貧血などがあれば、それ自体を治療することは大切です。
しかし、「しもやけがあるから鉄サプリを飲む」という順番ではありません。
日頃の食事を整えたうえで、貧血などが疑われる場合には血液検査を受け、その人に不足しているものを確認する方がよいと考えています。
毎年できるしもやけ、本当に「ただのしもやけ」?
多くのしもやけは寒い時期に起こり、暖かくなると改善します。
一方で、注意したいしもやけもあります。
大人になってから急に何度も起こる、暖かい季節になっても続く、皮膚が潰瘍になる、なかなか治らない、感染を疑うような膿が出る、といった場合です。
しもやけに似た皮膚症状は、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群などの膠原病、血管炎、甲状腺機能低下症などに伴うこともあります。
特に成人になってから繰り返す場合には、背景に別の病気がないか確認することが大切です。『今日の治療指針2026年版』でも、成人発症では基礎疾患に注意するよう記載されています。
また糖尿病があり、足に傷や皮膚の変化がある場合も、自己判断せず医療機関で確認してください。
しもやけとレイノー現象は同じ?
似ていますが、同じものではありません。
レイノー現象では寒さや緊張などをきっかけに指の血管が急に収縮し、指が白っぽくなったり青紫色になったり、その後赤くなったりします。
一方、しもやけでは赤紫色の腫れやかゆみ、痛みなどの炎症症状が数日間続きます。
ただし、レイノー現象のある方はしもやけを起こしやすいことがあり、両方が関係している場合もあります。
当院でできること
しもやけそのものは皮膚の炎症です。
そのため、当院で「整体によってしもやけを治す」と考えているわけではありません。
皮膚症状が強い場合、傷になっている場合、長期間改善しない場合には皮膚科での確認を優先してください。
そのうえで、冷えを強く感じる方について、普段の活動量、身体の緊張、睡眠、生活習慣などを確認し、身体を動かす方法や日常生活でできる冷え対策について一緒に考えることはできます。
大切なのは、
「冷えだから整体」
「しもやけだから自律神経」
「血流だから鉄」
と一つの原因に決めつけないことです。
しもやけには、寒さ、湿気、血管の反応、体質、生活環境などさまざまな要因が関係しています。
よくある質問
- Qしもやけになったら注意することは何ですか?
- A
患部を冷やし続けず、急に熱くしないことが大切です。
熱いお湯やストーブで一気に温めず、ゆっくり温めてください。かゆくても強くこすったり、かきむしったりしないようにしましょう。
- Qしもやけにおすすめの栄養や食材は何ですか?
- A
「これを食べれば治る」という食材はありません。
肉・魚・卵・大豆製品、野菜、果物などをバランスよく摂ることが基本です。鉄などの不足が心配な場合は、検査で確認してから補う方が安心です。
- Qしもやけの原因となる日常生活は何ですか?
- A
寒い・湿っている・長時間冷える環境に注意してください。
濡れた靴下や手袋をそのまま使う、薄着、きつい靴で足先を圧迫する、といった習慣は見直しましょう。
- Qしもやけはどのくらいで治りますか?
- A
一般的には、寒さを避けることで1〜3週間ほどで改善することが多いです。
長引く、傷や膿がある、暖かい時期にも繰り返す場合は皮膚科で確認してください。
- Qしもやけでもお風呂に入っていいですか?
- A
お風呂に入っても大丈夫です。
ただし熱いお湯で一気に温めず、無理のない温度でゆっくり温めるようにしてください。
まとめ
しもやけは「手足が冷えたから起こる」だけのものではありません。
寒さによって末端の血管が収縮し、その後温まる時の血流の戻り方、酸素供給、血液のうっ滞、皮膚の炎症などが関係していると考えられています。
昔からいわれている「動脈と静脈では回復の速さが違う」という説明も、発症機序の一つとして考えられていますが、まだすべてが解明されているわけではありません。
日常生活で特に意識してほしいのは、「冷やしすぎない」「濡れたままにしない」「冷えたら急に熱くせず、ゆっくり温める」ことです。
毎年繰り返す方も、「体質だから仕方ない」と決めつけず、まずは冬の過ごし方を見直してみてください。
そして、治りにくいしもやけや、大人になってから急に繰り返すようになった場合には、一度皮膚科などで別の病気が隠れていないか確認しておくことも大切です。

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参考文献
- 『今日の治療指針2026年版』:福井次矢・高木誠・小室一成 総編集
- 『標準皮膚科学 第12版』:石河晃・奥山隆平・阿部理一郎 編集
- 『今日の皮膚疾患治療指針 第5版』:佐藤伸一・藤本学・門野岳史・椛島健治 編集




