
「冬だけでなく一年中、手足が冷たい」
「電車に乗ると、周りの人は暑そうなのに自分だけ寒い」
「夏でもエアコンが苦手で、職場ではカーディガンが手放せない」
このような「冷え」で悩んでいる方は少なくありません。
特に女性では冷えを感じる方が多く、冷え性と自律神経や皮膚血流との関係についても研究されています。
当院にも、手足の冷えだけでなく、疲れやすい、眠りが浅い、肩や首がこる、ストレスが強いなど、いくつかの不調が重なって来院される方がおられます。
冷えは「身体を温めればそれで終わり」とは限りません。
運動量、筋肉量、生活リズム、睡眠、ストレス、食事、冷房環境など、いろいろな要素が重なっていることがあります。
この記事では、冷え症と自律神経の関係、夏に冷えやすくなる理由、日常生活でできる対策、当院での考え方について、できるだけわかりやすくお話しします。
- 一年中、手足の冷えが気になる
- 夏でもエアコンの風がつらい
- お風呂に入っても手足がなかなか温まらない
- 周りの人より寒さを強く感じる
- 冷えだけでなく肩こりや疲れ、不眠なども気になる
- ストレスが強くなると手足が冷える感じがする
- 自分でできる冷え対策を知りたい
冷え症とは?
冷え症、あるいは「冷え性」という言葉はよく使われますが、単純に体温が低いという意味ではありません。
日本東洋医学会では「冷え」を、ほかの多くの人が冷たいと感じないような環境でも、身体の全部または一部に冷たさを感じる状態として説明しています。
つまり、「体温を測ったら36℃以上あるのに、手足だけが冷たい」という方も冷えを感じることがあります。
反対に、体温計の数字だけを見て冷え症と判断するものでもありません。
冷えを考えるときには、体温の数字だけではなく、
- どこが冷えるのか
- いつ冷えるのか
- 寒い場所だけなのか
- ストレスが強いと冷えるのか
- 身体を動かすと楽になるのか
- 睡眠や疲労状態はどうか
なども一緒に見ていくことが大切です。
冷え症は女性に多い?
冷え性は男性より女性に多いことが報告されています。
日本自律神経学会誌に掲載された報告では、冷え性のある方には体格、身体活動、皮膚血流、自律神経機能など、さまざまな特徴が関係している可能性が示されています。
女性では男性と比べて平均的に筋肉量が少ないこともあり、これも冷えを考える一つの要素になります。
ただし、「筋肉が少ない女性だから冷える」と一つの原因だけで説明できるわけではありません。
よく運動している女性でも冷えを感じる方はおられますし、男性でも強い冷えを感じる方はいます。
大切なのは「女性だから仕方がない」と考えることではなく、自分の場合は何が関係していそうなのかを考えることです。
冷え症と自律神経の関係

当院が特に大切にしているのが、自律神経と冷えの関係です。
人間の身体は、外の気温が暑くても寒くても、身体の内部の温度を大きく変化させないように調節しています。
この体温調節に自律神経が関係しています。
暑くなったときには皮膚の血流を増やしたり汗をかいたりして、身体の熱を外へ逃がそうとします。
反対に寒くなると、皮膚の血管を収縮させて熱が外へ逃げにくいようにし、必要に応じて身体を震わせるなどして熱を作ろうとします。

こうしたことを私たちが、「よし、今から血管を縮めよう」「そろそろ汗を出そう」と考えてやっているわけではありません。
身体が自動的に調節してくれています。
これが自律神経の大切な仕事の一つです。
ストレスで手足が冷たくなることもある
緊張すると手が冷たくなった経験はありませんか?
強い緊張やストレスがかかると交感神経が働き、手足の末梢の血管が収縮しやすくなることがあります。
実際、寒さや精神的ストレスをきっかけとして手指の血管が強く収縮する「レイノー現象」という状態も知られています。
だからといって、「冷えている=自律神経が乱れている」と決めつけることはできません。
ただ、ストレスが続いている方や、緊張しやすい方、不眠や肩こりなども一緒にある方では、自律神経の状態も一つのポイントとして考えていく価値があります。
冷えの原因は一つではありません
以前は「冷え=血流が悪い」「冷え=自律神経」と簡単に説明されることもありました。
しかし実際には、冷えの感じ方にはいくつもの要素が関係します。
例えば、
- 外気温や冷房などの環境
- 運動不足
- 身体活動量の低下
- 筋肉量
- 睡眠不足
- 強いストレス
- 食事量の不足
- 長時間同じ姿勢で過ごすこと
- 手足の血管の反応
などです。
ですから当院でも、冷えている場所だけを見て終わるのではなく、普段の生活全体を確認するようにしています。
冷え症と「低体温症」は違います
ここは少し大切なところです。
「私、平熱が35℃台だから低体温症なんです」と言われることがあります。
しかし、普段の体温が35℃台だからといって、医学的な「低体温症」と同じ意味ではありません。
低体温症は、寒い環境などによって深部体温が低下して起こる状態で、重くなると意識障害などにつながることもあります。
一方、日常的に感じる「手足が冷たい」「人より寒く感じる」という冷え症とは別に考える必要があります。
以前は「体温が1℃下がると免疫力が○%下がる」「35℃ではがん細胞が増える」などの情報を見かけることもありましたが、体温と病気の関係をそこまで単純に数字だけで説明することはできません。
体温計の数字だけを怖がる必要はありません。
冷えが強いときに確認しておきたいこと
多くの冷えは生活環境や体質などとも関係しますが、ときには身体の病気が関係していることもあります。
例えば甲状腺機能低下症では、寒さに弱くなることに加えて、疲れやすさ、便秘、体重増加などがみられることがあります。
また、
- 指が白や青紫色になる
- 冷えると指が強く痛む
- しびれが強い
- 左右差が非常に大きい
といった場合には、レイノー現象などが関係していることもあります。
今までとは違う強い冷えが出てきた場合や、冷え以外の症状も強い場合には、一度医療機関で確認してもらうことも大切です。
夏なのに冷えるのはなぜ?
冬の冷えはわかりやすいのですが、意外と多いのが「夏の冷え」です。
外は35℃近くあるのに、スーパーや電車、オフィスへ入った瞬間、「寒っ!」となる方もおられると思います。
外の暑さに合わせた薄着のまま、冷房の効いた場所に長時間いると身体が冷えやすくなります。
さらに夏は、
- 冷たい飲み物が増える
- アイスなど冷たいものを食べる機会が増える
- 暑くて運動量が減る
- 夜も暑く睡眠不足になりやすい
- 外と室内の温度差が大きい
といったことも重なります。
一般的に「クーラー病」「冷房病」と呼ばれることがありますが、正式な病名というより、冷房環境によって起こるさまざまな不調を表す言葉として使われています。
夏の冷え症対策5つ
① エアコンを我慢しすぎない
「冷えるからエアコンは使わない」というのもおすすめできません。
夏は冷え対策と同時に、熱中症対策の方がさらに重要です。
室温だけでなく湿度や暑さ指数(WBGT)も参考にしながら、無理のない温度に調節してください。
家族で体感温度が違う場合には、エアコンを消してしまうのではなく、服装などで調整する方が安全です。
② カーディガンなどを1枚持っておく
スーパー、電車、病院、映画館などは思った以上に冷えていることがあります。
夏でも薄手のカーディガンや羽織れるものを1枚持っていると便利です。
③ 足元が冷える場合はブランケットを使う
オフィスでは冷たい空気が足元にたまりやすく、上半身は暑いのに脚だけ冷える方もいます。
そのような場合には、小さなブランケットやレッグウォーマーなどを利用してみてください。
④ 首・お腹・足首などを冷やしすぎない
身体全体を厚着する必要はありません。
冷えを感じやすい場所を部分的に保温した方が楽な方もいます。
ただし締め付けの強い靴下や衣類は避け、自分が心地よく感じるものを選びましょう。
⑤ 冷たいものばかりに偏らない
暑い日に冷たい飲み物を飲んではいけないという意味ではありません。
熱中症予防では水分補給が最優先です。
ただ、一日中冷たいものばかりで胃腸がしんどく感じる方は、常温の水や温かい汁物なども組み合わせてみてください。
冷え症の方におすすめしたい運動
身体で熱を作るうえで、筋肉を動かすことは大切です。
だからといって、いきなり激しい筋トレをする必要はありません。
冷えが気になる方ほど、まずは軽い運動を習慣にする方がおすすめです。
- 10~20分程度歩く
- 座りっぱなしなら時々立ち上がる
- かかとの上げ下げをする
- 軽いスクワットをする
- 肩や背中をゆっくり動かす
「週末だけ頑張って1時間運動する」よりも、毎日の生活の中で少しずつ身体を動かす時間を増やしてみてください。
デスクワークの方なら、仕事中に1~2分歩くだけでも「ずっと同じ姿勢」を途切れさせることができます。
冷え症と食事
食事についても「これを食べれば冷え症が治る」という食品はありません。
まず大切なのは、
- 食事量が極端に少なくなっていないか
- 食事を抜くことが多くないか
- 炭水化物だけで終わっていないか
- 肉・魚・卵・大豆製品なども食べているか
- 水分が不足していないか
など、食事全体を見ることです。
特にダイエットなどで食事量をかなり減らしている方では、身体を動かすためのエネルギーや必要な栄養が足りなくなっていないか確認してみましょう。
東洋医学では食べ物を「温・冷」で考えることもあります
東洋医学では、食べ物を身体を温める方向に働くもの、冷やす方向に働くものとして考える方法があります。
例えば、生姜、ねぎ、根菜類、温かい汁物などを冷えが気になるときの食事に利用することがあります。
一方、これは現代医学の食品分類とは違う考え方です。
「トマトを食べたら身体が冷えるからダメ」「バナナは冷えるから絶対に食べない」と極端に制限する必要はありません。
当院でも東洋医学の考え方を参考にすることはありますが、一つの考え方だけに偏らず、その方の食事量や生活全体を見ることを大切にしています。
冷え症に対する当院の考え方
当院では「冷えているから、そこを温めれば終わり」とは考えていません。
まず、
- どこが冷えるのか
- いつから冷えるのか
- 夏と冬で違うのか
- 睡眠はとれているか
- 運動量はどうか
- 食事はとれているか
- 仕事や家庭でストレスが続いていないか
- 肩や首、背中などに強い緊張がないか
などをお聞きします。
身体を確認すると、冷えだけでなく肩や首がガチガチになっていたり、呼吸が浅くなっていたり、疲れがかなりたまっている方もおられます。
そのような場合には、身体の状態を確認しながら全身をやさしく調整していきます。
また必要に応じて、運動、睡眠、食事、ストレス対策など、その方が実際にできそうなことを一緒に考えていきます。
冷えだけを追いかけるのではなく、「なぜ今、この身体は冷えを強く感じているのだろう?」という視点で見ていくことを大切にしています。
大型冷蔵庫の前で働き、冷えや身体の痛みに悩んでいた方
以前、大型冷蔵庫の近くで長時間仕事をされている方が来院されました。
常に冷えた環境で仕事をされており、冷えだけでなく膝や股関節、肩、首などにもつらさがありました。
仕事中は身体を動かしてはいるのですが、同じような動作が続き、冷えた場所に長時間いる生活です。
当院では冷えている場所だけを見るのではなく、身体の緊張や動きなどを確認しながら全身を調整しました。
このように、仕事そのものを変えることが難しい場合には、「仕事を辞めないと冷えはどうにもならない」ではなく、服装や身体の動かし方、休憩時間の使い方など、今の環境の中でできることを考えることも大切です。
義母の介護で我慢が続き、低体温や足のムズムズが気になっていた方
もう一人印象に残っているのが、義母の介護でかなり疲れていた方です。
心も身体も疲れ切った状態で来院され、当時は体温が35℃台のことが多かったそうです。
足にも虫が這うようなムズムズした不快感があり、身体だけではなく精神的にもかなりつらい状態でした。
そこで身体への施術だけでなく、お話を聞きながらカウンセリングのワークなども取り入れ、生活の中で抱えている負担についても一緒に整理していきました。
3カ月ほど経ったころには、以前より心身の状態が落ち着き、笑顔でお話しされることが増えてきました。
この方をみていても感じたのは、冷えだけを切り離して考えるのではなく、睡眠、疲労、精神的な負担、身体の緊張などを一緒に見ていくことの大切さです。
冷え症は「温めるだけ」ではなく生活全体を見る
冷えが気になると、「温かいものを食べよう」「靴下を重ね履きしよう」「カイロを貼ろう」と、とにかく温めることばかり考えてしまいがちです。
もちろん、保温して楽になるのであれば上手に使ってください。
しかし、冷えを感じる背景には運動不足、睡眠不足、ストレス、食生活、長時間同じ姿勢でいることなどが重なっている場合があります。
だからこそ、温める+身体を動かす+しっかり休む+きちんと食べるという基本も大切です。
特別な健康法を探す前に、まず今の生活の中で一つ変えられるところを見つけてみてください。
- Q冷え症は自律神経と関係がありますか?
- A
関係することがあります。
体温調節には自律神経が関わっており、寒いときには皮膚の血管を収縮させて熱を逃がしにくくし、暑いときには発汗や皮膚の血流を増やして熱を逃がします。
また、強い緊張やストレスが続いたときに交感神経が働き、手足が冷たく感じる方もいます。
ただし、冷えの原因がすべて自律神経というわけではありません。運動量、睡眠、食事、冷房環境なども一緒に考えることが大切です。
- Q夏なのに手足が冷たいのはなぜですか?
- A
夏でも冷えを感じる方は少なくありません。
エアコンの効いた室内に長時間いたり、薄着のまま冷えた場所で過ごしたりすると、手足やお腹などが冷たく感じることがあります。
さらに夏は、冷たい飲み物や食べ物が増える、暑さで運動量が減る、睡眠不足になりやすいなど、いくつかの要素が重なることもあります。
冷えが気になる場合でも、熱中症予防のためエアコンを我慢しすぎないようにしてください。
- Q冷え症には運動をした方がいいですか?
- A
無理のない運動はおすすめです。
筋肉を動かすと身体の中で熱が作られますので、散歩、かかとの上げ下げ、軽いスクワットなどから始めてみてください。
いきなり激しい運動をする必要はありません。
デスクワークが長い方なら、30~60分ごとに一度立って少し歩くだけでも、長時間同じ姿勢を続けないための対策になります。
- Q冷え症にはお風呂に入った方がいいですか?
- A
お風呂に入ると身体が温まり、気持ちよく感じる方は多いです。
シャワーだけで済ませることが多い方は、体調に問題がなければ湯船につかるのも一つの方法です。
ただし、熱すぎるお湯に長時間入る必要はありません。
「身体を温めなければ」と頑張りすぎず、心地よく入れる温度と時間を目安にしてください。
- Q冷え症で病院へ相談した方がいいこともありますか?
- A
あります。
冷えだけでなく、
- 指が白色や青紫色に変わる
- 冷えると指に強い痛みが出る
- しびれが強い
- 左右で冷たさが大きく違う
- 今までになかった強い冷えが急に出た
- 強い疲労感や便秘など、ほかの症状も続いている
といった場合には、一度医療機関で相談してみてください。
冷えは生活環境や体質だけでなく、甲状腺の病気や血管の問題などが関係する場合もあります。
当院でも、冷えの状態だけを見るのではなく、身体全体や生活習慣を確認しながら対応しています。
まとめ
冷え症は単純に「体温が低い人」という意味ではありません。
手足など身体の一部分が強く冷たく感じる方もおられ、冷えの感じ方には自律神経や皮膚血流、身体活動、生活環境など、さまざまな要素が関係しています。
冷えが気になる方は、まず次のことから始めてみてください。
- 同じ姿勢を長時間続けない
- 少しでも身体を動かす
- 冷房で冷えすぎないよう服装を調節する
- 夏は冷え対策だけでなく熱中症にも注意する
- 食事を極端に減らさない
- 睡眠時間を確保する
- 強いストレスが続いていないか振り返る
冷えだけでなく、肩こり、頭痛、眠れない、疲れやすい、身体がいつも緊張しているなどの不調も重なっている場合には、身体全体から見直してみるのも一つだと思います。
当院では自律神経の働きも含め、身体の状態や生活習慣などを一緒に確認しながら、その方に合った方法を考えていきます。
「昔から冷え性だから仕方がない」
と決めつけず、できるところから少しずつ身体の使い方や生活を見直してみてください。

参考文献・参考資料
- 新藤和雅「冷え性と自律神経」自律神経 2023;60(2):71-75
- 伊藤剛「冷え症と自律神経」自律神経 2022;59(1):10-15
- 一般社団法人 日本東洋医学会「漢方について―冷え」
- 環境省「熱中症予防情報サイト・暑さ指数(WBGT)」
- MSDマニュアル家庭版「レイノー症候群」
- MSDマニュアル家庭版「甲状腺機能低下症」



