
なかなか痛みや不調が良くならないと、「どうして私だけこんなに治らないんだろう」「このままずっと続くのかな」「また悪くなったらどうしよう」と、不安になってしまうことがあります。
特に、小さい頃から真面目で人に気を使いやすく、音や光、人の表情や言葉にも敏感な方は、気づかないうちにいつも周りに気を配りながら生活していることがあります。
そのため、「○○すべき」「○○でなければならない」「ちゃんとしなければ」「人に迷惑をかけてはいけない」「どうせ私なんて」と、自分自身を追い込むような考え方が強くなることもあります。
でも、このような考え方のクセがあるからといって、あなたが悪いわけではありません。
むしろ、それまで生きてきた環境の中で自分を守ったり、人間関係をうまく保ったり、失敗を避けたりするために必要だった考え方なのかもしれません。
真面目だったから頑張ってこられた、人の顔色を読んだから周囲とうまくやってこられた、悪いことを先に考えたから大きな失敗を避けられた。
そう考えると、その思考のクセには役に立っていた時期もあったはずです。
だから、すべてを否定したり無理に性格を変えたりする必要はありません。
ただ、その考え方が今の自分を苦しくさせているのであれば、「もしかしたら、違う見方もあるかもしれない」と少しだけ考え方の幅を広げてみることで、心や体への負担が軽くなることがあります。
この記事では、痛みや不調が長引くときに関係することがある「認知の歪み」と、ストレスや自律神経との関係について、できるだけわかりやすくお伝えしていきます。
- 真面目で頑張りすぎてしまう方
- 人の顔色を気にしすぎてしまう方
- 「○○すべき」と考えることが多い方
- いつも最悪のことを先に考えてしまう方
- 良くなったところより悪いところが気になる方
- 「どうせ私は治らない」と考えてしまう方
- 痛みや体調不良が長く続いている方
なぜ治りにくいのか?
最初にお伝えしておきたいのは、「考え方が悪いから治らない」という話ではありません。
痛みや体調不良には、ケガ、病気、睡眠、栄養状態、生活習慣など、さまざまな原因や背景があります。そのうえで、症状が長引いてくると「その症状をどう受け止めているか」が苦しさをさらに大きくしてしまうことがあります。
例えば、
- 「私はどうせ治らない」
- 「また痛くなった。全然良くなっていない」
- 「こんなこともできない私はダメだ」
- 「このまま一生続くかもしれない」
と考えていると、
不調が出る
↓
不安になる
↓
身体を何度も確認する
↓
悪いところばかり気になる
↓
さらに不安になる
↓
身体が緊張する
という悪循環に入ることがあります。
心のメガネが曇っていませんか?
私は「認知の歪み」を、曇ったメガネに例えることがあります。
先週より頭痛が減っている、少し眠れるようになった、外出できるようになった。それでも「まだ症状があるから全然良くなっていない」と考えてしまえば、せっかくの変化が見えません。
大切なのは、無理に前向きになることではなく「悪いところだけを見ていないかな?」と一度確認することです。
思考・ストレス・自律神経はつながっています
怖いことを考えただけでも、心臓がドキドキしたり、手に汗をかいたり、身体に力が入ったりすることがあります。
脳が「危険かもしれない」と判断すると、交感神経の働きが高まり、身体は戦ったり逃げたりするための状態になります。強い緊張が続けば、心拍が速くなる、呼吸が浅く速くなる、肩や首に力が入る、胃腸の調子が変わる、眠りにくくなるなど、さまざまな身体反応が出ることがあります。
これは本来、私たちを守るために必要な反応です。問題なのは、危険がないときまで頭と身体が緊張した状態から戻りにくくなることです。

回復のために大切にしたいこと
私は、次の3つを大切にしています。
- 活動するときと休むときに、自律神経が切り替わること
- 栄養、睡眠、運動、休養など身体を支える土台を整えること
- 「今は安心していい」と感じられる時間をつくること
交感神経が悪く、副交感神経が良いという単純な話ではありません。大切なのは、必要なときに動き、必要なときに休めることです。
また栄養も大切ですが、「この食品を食べればいい」「このサプリさえ飲めばいい」と一つだけに頼るのではなく、睡眠や運動、ストレス、胃腸の状態なども含めて考えることが必要です。
休むことも大切な対策です
頑張り屋さんほど、休むことに罪悪感を持ちやすいものです。
- 休む予定を先に入れる
- お風呂など、自分なりのオンとオフをつくる
- しっかり休む日と軽く身体を動かす日を使い分ける
- 仕事中でも5分だけボーッとする
- 楽しい予定や小さなご褒美をつくる
全部の時間を有意義に使わなくても大丈夫です。
10個の偏った考え方|あなたはいくつ当てはまりますか?
ここからは、代表的な「認知の歪み」を10個紹介します。
全部直そうとしなくて大丈夫です。誰にでも多少はありますので、「これ、自分にもあるな」と気づくだけでも十分です。
① 白黒思考

全か無か、ゼロか100かと極端に考えてしまうクセです。
「今日は少し痛かった」
↓
「やっぱり全然治っていない」
昨日よりかなりラクになっていても、症状がゼロでなければ「治っていない」と考えてしまいます。
対策

100点でなくても大丈夫です。
「昨日より少しマシ」
「今日は60点くらい」
それでも十分です。
「まあ、いいか」と思える余白をつくってみてください。
② すべき思考

「○○すべき」「○○でなければならない」という自分のルールで、自分自身を追い込んでしまう考え方です。
「仕事を休んではいけない」
「人に迷惑をかけてはいけない」
「母親だからしっかりしなければ」
真面目で責任感が強い人ほど、この考え方になりやすいことがあります。
対策

「○○すべき」を「できたらいいな」「今できる範囲でやろう」に変えてみます。
できていないことだけではなく、できていることにも目を向けてください。
③ 選択的抽出・心のフィルター

良いことはスルーして、悪いことだけ大きく見てしまう考え方です。
頭痛は減った、眠れるようになった、外出できた。でも肩が痛い。
すると「全然良くなっていない」と肩の痛みだけを見るようになります。
対策

私は、「0.1でも良くなっているところはないかな?」と探してもらいます。
0か100ではありません。0.1でいいのです。
④ 一般化のしすぎ

一つの出来事だけで「いつも」「全部」「みんな」と考えてしまうクセです。
一度失敗しただけで「私はいつも失敗する」、一人とうまくいかなかっただけで「誰とも仲良くできない」と考えてしまいます。
僕も子どもの頃、欲しいゲームがあると親に「みんな持ってるから」と言ったことがありますが、本当に全員が持っていたわけではありません(笑)
対策

「本当にいつもかな?」
「本当に全員かな?」
「今回は、じゃないかな?」
と一度確認してみてください。
⑤ 結論の飛躍
「結論の飛躍」には、大きく分けて2つのパターンがあります。
相手の気持ちを決めつけてしまう

まだ十分な根拠がないのに、「きっと相手はこう思っている」と決めつけてしまう考え方です。
例えばLINEを送ったのに返事が来ないと、
「怒っているのかな」
「嫌われたのかな」
「何か悪いことを言ったかな」
と考えてしまうことがあります。
でも実際には、仕事中だった、スマホを見ていなかった、返信を忘れていたなど、別の理由かもしれません。
対策

「これは事実なのか、それとも自分の想像なのか」と、一度分けて考えてみてください。
相手の気持ちは、本人に確認しないとわからないことも多いものです。
まだ起きていない未来を決めつけてしまう

もう一つは、「先読みの誤り」です。
今日は少し体調が悪かった。
すると、
「明日もきっと悪い」
「またあの症状が出る」
「このまま一生治らないかもしれない」
と、まだ起きてもいない未来まで悪い方向に決めつけてしまいます。
対策

未来はまだ起きていません。
先のことを考えすぎて不安になったときは、「今できることは何だろう」と現在に意識を戻してみてください。
相手の気持ちを読みすぎたときは「確認する」、未来を先読みしすぎたときは「今に戻る」。
この2つを意識するだけでも、頭の中で作ったストーリーに振り回されにくくなります。
⑥ 感情的決めつけ

「不安だから危険に違いない」
「怖いから重大な病気に違いない」
というように、自分の感情をそのまま事実だと考えてしまうクセです。
対策

「私は今、不安なんだな」と感情を認めたうえで、「実際に起きている事実は何だろう」と分けて考えてみます。
⑦ マイナス思考

良いことまで否定してしまう考え方です。
「今日は顔色がいいですね」と言われても、「でも昨日は最悪でした」と打ち消してしまう。
謙遜することと、自分の良いところを全部否定することは違います。
対策

褒められたら、「ありがとうございます」だけでも大丈夫です。
良かったことに毎回「でも」をつけていないか確認してみてください。
⑧ 拡大解釈と過小評価

失敗は大きく、自分の頑張りは小さく評価してしまいます。
一つ失敗すると「最悪」、10個うまくできても「これくらい普通」と考えてしまう状態です。
対策

「同じことを友達がしたら、私は何と言うかな?」と考えてみてください。
友達に言える優しい言葉を、自分にも少し使ってあげてください。
⑨ レッテル貼り

仕事で一度失敗しただけで「私はダメ人間だ」、人前で緊張しただけで「私はコミュニケーション能力がない」と、自分全体を決めつけてしまいます。
対策

「私はダメ」ではなく、「今回はうまくいかなかった」に変えてみます。
一つの出来事と、その人の人格は別です。
⑩ 個人化

何か問題が起こると、「全部自分のせいだ」と考えてしまうクセです。
家族が不機嫌、子どもが元気がない、職場の人が怖い顔をしている。
そのたびに「私が何かしたのかな」と考えてしまいます。
対策

「これは本当に100%私の責任かな?」と考えてみてください。
相手の体調、仕事、人間関係、タイミングなど、自分とは関係のない理由もたくさんあります。
認知の歪みを全部直そうとしなくていい
ここまで読んで、「私、いっぱい当てはまっている」「全部直さないと」と思った方。
それこそ「すべき思考」になってしまいます(笑)
認知の歪みは、誰にでもあります。
大切なのは消すことではなく、「あ、今また白黒思考になっているな」「先読みしているな」と気づくことです。
考え方そのものと少し距離を取れるだけでも、気持ちがラクになることがあります。
「考え方を変えれば治る」という話ではありません
最後に、ここは誤解してほしくありません。
私は「前向きに考えれば病気が治る」「治らないのは考え方が悪い」と言っているわけではありません。
痛みや不調がある場合には、必要に応じて医療機関で原因を確認することも大切です。
そのうえで、長く続く不調では、身体の状態だけでなく、睡眠、活動量、ストレス、不安、考え方などが互いに影響し合うことがあります。
だから私は、痛い場所だけを見るのではなく、身体、生活習慣、栄養、睡眠、ストレスなどを含めて、その方全体を見ることを大切にしています。
よくある質問
- Q認知の歪みがあると、痛みや不調が治りにくくなるのですか?
- A
認知の歪みだけが原因で痛みや不調が長引くとは言えません。ただ、不安や緊張が強くなったり、身体を必要以上に気にしたりすることで、痛みの感じ方や睡眠、行動などに影響することがあります。
- Q認知の歪みは性格の問題ですか?
- A
性格が悪いという意味ではありません。これまでの経験や環境の中で身についた「考え方のクセ」のようなものです。誰にでも多少はありますので、自分を責める必要はありません。
- Q10個の認知の歪みを全部直した方がいいですか?
- A
全部直そうとする必要はありません。「今、白黒思考になっているな」「先読みしているな」と気づくだけでも第一歩です。無理に考え方を変えようとせず、少しずつ別の見方を増やしてみてください。
- Q考え方を変えれば痛みは治りますか?
- A
考え方を変えれば痛みが治る、という単純なものではありません。慢性的な痛みには身体的・心理的・社会的な要因が関係することがあります。身体の状態、睡眠、運動、ストレスなどを含めて考えることが大切です。
- Q痛みや不調が長く続いている場合、整体だけで大丈夫ですか?
- A
原因がはっきりしない痛みや不調、急に強くなった症状などは、まず医療機関で確認することも大切です。当院では診断や病気の治療ではなく、身体の緊張や生活習慣などを確認しながら心身が休みやすい状態づくりをお手伝いします。
まとめ|0.1でも良くなっているところを探してみてください
「どうせ治らない」
「また悪くなった」
「私はダメだ」
体調が悪い日が続けば、そう思うこともあります。
でも、その考えが必ずしも事実とは限りません。
昨日より0.1だけ良くなっているところがあるかもしれない。一度うまくいかなかっただけかもしれない。今日は体調が悪かっただけかもしれません。
今まで身につけてきた考え方には、それまでの人生では必要だった理由があったのだと思います。
だから全部を否定する必要はありません。
ただ、その考え方が今の自分を苦しくさせているのであれば、「もしかしたら、違う見方もあるかな」と少しだけ心のメガネを拭いてみてください。
無理にポジティブになる必要はありません。
「まあ、いいか」「今日はこんな日もあるか」そう思える日が少しずつ増えていけば、それで十分です。

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- 認知の歪みとは?不安が強くなる思考のクセをやさしく解説
参考文献
- International Association for the Study of Pain(IASP)「Pain Management Center – Chapter 1」
- International Association for the Study of Pain(IASP)「IASP Curriculum Outline on Pain for Psychology」
- International Association for the Study of Pain(IASP)「Behaviour Change Principles for Persistent Pain」
- NICE Guideline NG193「Chronic pain (primary and secondary) in over 16s」2021
- Beck, A. T.『Cognitive Therapy and the Emotional Disorders』International Universities Press, 1976
- Burns, D. D.『Feeling Good: The New Mood Therapy』William Morrow, 1980
- 『痛みからの解放』ピーター・A・ラヴィーン/マギー・フィリップス




