小さい頃から親に褒められたことなんてありません。
いつも孤独を感じていました。本当は誰かと一緒に過ごしたいとは思っています。
自分に自信がないし、もし嫌われたらどうしようと常に思って怖いです。
人には人格というものがあります。単なる性格ではなく脳の機能的な問題も含まれます。その人格によって日常生活に支障が出てくる場合をパーソナリティ障害といいます。その障害のために社会になじめず「うつ病」になってしまうことがあります。
共通の特徴としては「子どもの時の生き辛さ」があって、生き抜いていくためにしょうがなく無意識に適応して身に付けてきたものと考えられます。ですので非常に偏った考え方や行動や能力が身に付いてしまいます。そのある意味「特殊能力」を大人になっても使い続けてしまいトラブルを起こしてしまうことになります。
その中で今回は「失敗が怖くて自分に自信がない」という特徴を持っている回避性パーソナリティ障害について詳しくみていきます。
自分に自信がない「回避性パーソナリティ障害」
褒められずに育った子供に多いのが回避性パーソナリティ障害です。家族の中に自己愛性パーソナリティ障害の人がいる場合は、その方よりも目立たない方が、うまく過ごせたことにより、光と影では「影の存在」として過ごした方が楽なので回避性パーソナリティ障害になる方も多いです。
簡単にいいますと「優秀なお兄ちゃんがいる家庭」で育った弟のような感じです。親はお兄ちゃんに期待をするが弟には、全く褒めたりせずに影のように生きていた場合です。
回避性パーソナリティ障害と聞いてピアノ奏者の清塚信也さんの子供のころの話を思いだしました。清塚さんは僕の好きなドラマの「コウノドリ」のBABYの吹き替えもされておりました。清塚さんが育った環境では、かなりのスパルタのお母さんだったのは有名です。お母さんの口癖は「ピアニストにならなければ生きていなくていい、人間は死んだら、ずっと寝ているんだから、今寝るな!」だったそうです。
客観的に第三者から見て、お母さんは、かなりの認知の歪みがあったように思えます。
超一流となればスポーツ選手も異常な家庭環境で育った方が多いとも聞きます。
当然、清塚さんも学校の勉強よりもピアノだったそうです。「漢字も計算も雑念だと思え」と言われていたそうです。清塚さんはピアノで大成功されたので、本当に良かったですが、もしもピアニストでなかったら大変だったかもしれません。
褒められたことが、殆どない方は自己肯定感が低くなりやすく回避性パーソナリティ障害になる可能性があるのです。ものすごくスパルタで育てられ、それしか生きる道がないというくらいに追い詰められて育ったような方です。うまく成功すれば跳びぬけて目だった存在になりますが、挫折を味わうことで人生が狂ってしまうかもしれないこともあります。
逆に褒められて育った子供は、へこたれないということもあります。
テスト⑧
参考文献:「パーソナリティ障害」岡田尊司著より
他のパーソナリティ障害をチェック
一言でいうと・・・ | パーソナリティ | チェックしてください |
自分が嫌い | 境界性 | テスト① |
ナルシスト | 自己愛 | テスト② |
他人の評価こそ重要 | 演技性 | テスト③ |
違法なことを繰り返す | 反社会性 | テスト④ |
人を心から信用できない | 妄想性 | テスト⑤ |
マイペース | 失調性 | テスト⑥ |
一人が好き | シゾイド | テスト⑦ |
自分に自信がない | 回避性 | テスト⑧ |
誰かに頼りすぎてしまう | 依存性 | テスト⑨ |
白と黒がハッキリしすぎる | 強迫性 | テスト⑩ |
回避性パーソナリティ障害の特徴
- 自分に自信がない、失敗するくらいなら最初からやらない方がいいと想っている
- 失敗や傷つくことを極度に恐れる
- 社会で生きることは、楽しいことよりも、苦痛ばかりが強く感じられる
- 食わず嫌いの人生観を持つ
- 「無理」「無駄」「どうせ」「やっぱり」が口癖
- 本心では人との触れ合いを求めているが、自分に自信がなく、どうせ愛してもらえないと思い込んでいるため、他者から拒絶されたり、否定されたりして傷つくのを恐れて、深い人間関係を避けてしまう
- 引きこもりも多い
- 自己愛性パーソナリティ障害の兄弟や家族がいると、自分は目立たない影のような存在として育ってきたという背景がある
- 褒められたことがほとんどない
- 母親は完璧主義で、義務感の強い人で、できるのが当然だという態度で、子供にも自分にも望むような人(そういう母親に育てられた)
- 母親は楽しみよりも義務の履行を優先するような律儀な人で、うつ状態の人が多い(そういう母親に育てられた)
- 頑張らされ続けた子供に多く、後遺症として無気力状態を伴う
- 父親が立派すぎると、萎縮してしまう子供も多い
- 自分の主体性を大切にされずに育っていることが多く、自分の選択肢を尊重してもらえなかった体験がよく見いだされる
回避性パーソナリティ障害への接し方
- 本人の主体性を尊重する
- 日頃から親ではなく、本人が何を求めているのか、何がやりたいのかを大事にする
- 助け舟をだしたり、逃げ場をつくってあげる
- 周囲が先に、何かしろと口出ししないこと(余分なものはあたえずハングリーな状態におくこと)
- 本人が意思表示するのを待つのが大切(子供にはお菓子を先にあたえず、お腹がすいたらつまみ食いするくらいが調度良い)
- 子供の「やりたい」「やめたい」などという言動にしっかりと耳を傾けて、頭ごなしに強要してはいけない(ちゃんと理由をきくこと)本人の意思を尊重する
- 周囲は過剰反応せずに、まずは休ませること(疲れたときは休ませる)
- 義務感の強い強迫性パーソナリティ障害の親に育てられると、萎縮してしまう癖がついてしまっている(こうするのが当たりまえだから絶対にそうしないといけないと育てられている)
- 一喜一憂せずに本人を信じる
- 否定的ないい方は禁物(やりたいことをやらせてあげる)
自分で回避性パーソナリティ障害を克服したい方
- 失敗を恐れない、とにかくやってみる
- 動いてみると、自分を縛っていたのは、実は自分自身の動けないという思い込みだったことに気づく
- 正当化する屁理屈をこねたり、アルコールで神経を麻痺させて、無駄に時間をすごしているうちに、ますます外に出るのが億劫になるので、嫌でも外に出る環境に身をおく
当院の症例
当院で不登校でお悩みの高校1年の女学生の方がいらっしゃいます。
高校に進学が決まり最初の半年は通学できていたのですが、一度、てんかんの発作があり、その時に、友人に迷惑をかけたのが、気になって不登校になってしまいました。
元々、お友達は1人しかおらず、そのお友達以外は、殆どしゃべれなかったそうです。他の人に迷惑をかけてはいけない、恥ずかしいと極端に思うようになり、それから学校に行けなくなりました。
パーソナリティをチェックリストで調べてみると、回避性パーソナリティ障害に当てはまりました。
当院へお越しいただいた当初は、お話することも殆どできませんでした。「はい」「いいえ」くらいしか返答はなかったです。「何に困っているのか」も言語化できず体の不調な部分だけは答えてくれました。
他には症状として起立性調節障害による「めまい」で朝、起き上がれず学校に行けなかったそうです。お母さんがとても不安症・心配症の方なので、その波長を娘さんは極端に感じ取っていたかもしれません。
そこでコミュニケーションの手段として、20種類くらいある「気持ちくんカード」というものを使いました。カードを選んでもらい、名前をつけて「なんと言っている」などと代弁してもらうようにすると、どんどんお話してくださるようになりました。
今の気持ちを選んでもらうと、上の図を選んでくれました。このイラストの子は「何もしたくない」「暇や~」と言っているとお話してくれました。
ご本人では気づかなかった部分が、たくさん見えてきて、かなり有意義なセッションとなりました。今後も引き続き、心が軽くなられるように、全力でサポートさせていただきます。
まとめ
- しっかりとコミュニケーションを取り、失敗しても大丈夫と思ってもらう
- 不安傾向が強いので軽い運動や自然と触れ合うようにしてもらう
- まずは「意志」を出せるようにしていくために、「今日は何が食べたい?」から始めてみる